週刊エコノミスト「サウジ皇太子が掲げる聖域なき摘発、日本企業進出の窓口一新も」

ムハンマド皇太子の主導する腐敗摘発は今後どうなるのか、日本企業へはどう影響するのか。

これらの点について、本日発売の「週刊エコノミスト2017年12月12日号」に、「サウジ皇太子が掲げる聖域なき摘発、日本企業進出の窓口一新も」というレポートを寄稿させて頂きました。巻頭部の14-15 頁です。

お読みいただければ幸いです

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「腐敗のゼロ・トレランス摘発」という最強カード

今回のサウジアラビアの粛清では、「腐敗摘発」という大義名分が使われている点が注目されます。

権力闘争の手段として「腐敗の摘発」を利用するというのは、現代では、中国やベトナムといった社会主義国のお家芸となっており、例えば中国では習近平総書記(国家主席)が、盟友である王岐山が率いる「共産党中央規律検査委員会」を駆使して、周永康、薄煕来、令計画、郭伯雄、徐才厚らの大物政敵を次々と収賄罪等の嫌疑をかけて追い落とし、権力の基盤固めに成功しています。

また、ベトナムでも同様に、最高権力者グエン・フー・チョン書記長が、失脚したズン前首相に連なる経済人脈を汚職の嫌疑で摘発しています(詳細は、エコノミスト2017年10月17日号をお読みください)。

それは、腐敗の摘発が政治的な意味で、誰しもが正面からは反対できない現代の「最強のカード」だからです。

これまでに習近平総書記とチョン書記長、サルマン国王と習近平総書記との間で、首脳会談が実施されておりますが、少なくとも前者では腐敗摘発というカードについて話し合いがなされたと報道されています。

このカードが、サウジアラビアで使われた、しかも「ゼロ・トレランス」で。これこそが、今回の粛清が世界に衝撃を与えた理由の一つだと考えられます。

ゼロ・トレランス(zero tolerance)とは「聖域なき取り締まり」を行うということ。実は、ムハンマド副皇太子が提唱したVision2030 には腐敗防止が組み込まれていました。

Embracing transparency

We shall have zero tolerance for all levels of corruption, whether administrative or financial. We will adopt leading international standards and administrative practices, helping us reach the highest levels of transparency and governance in all sectors. We will set and uphold high standards of accountability. Our goals, plans and performance indicators will be published so that progress and delivery can be publicly monitored. Transparency will be boosted and delays reduced by expanding online services and improving their governance standards, with the aim of becoming a global leader in e-government.

http://vision2030.gov.sa/en/node/106

「Embracing transparency」つまり透明性の確保という段落で、「管理部門から財政部門まで、あらゆるレベルの腐敗に対してゼロ・トレランスで望まなくてはならない」と明言されていたのです。

反撃を許すことなく有力者を一斉に拘束し、高級ホテル「リッツ・カールトン」に幽閉することに成功した今回の粛清劇は、その手際の良さからみても、周到に用意されていたものだったに違いありません。そして、Vision2030に忍び込んでいた腐敗撲滅のゼロ・トレランス宣言は、今回の粛清の布石だった可能があると考えられます。

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サウジ粛清の背景

今回の粛清劇で、なぜ重臣の一斉拘束という強硬策が取られたのでしょうか。

2015年1月にアブドラ前国王が逝去し、サルマン現国王(King Salman bin Abdulaziz Al Saud)が王位を継承して僅か3ヶ月後、当時国防相だった七男ムハンマド氏(Mohammed bin Salman(通称MbS)。当時、国防相兼経済開発評議会議長)が副皇太子に任命されました。それ以来、彼が国王の後継者であることは規定路線だったと言って良いでしょう。

初代国王アブドゥルアジズの子孫であるファイサル家やアブドラ家といった名門諸家の間の均衡を重視する時代は去り、スデイル家(スデイリー・セブン。初代国王の妻ハッサ・スデイリー妃を母とする7兄弟の家系)、なかでもサルマン家を重用する傾向は明らかになっていました。ムハンマド副皇太子氏の有能さを評価する声は高く、このままいっても国王継承には問題がなかったはずです。

また、ムハンマド副皇太子は就任後、経済政策の実権を握る経済開発評議会議長として、原油産出に依存してきたサウジの国家経営を根底から改革することに着手し、2016年4月には、国営石油会社サウジアラムコのIPO(新規株式上場)等を柱とする包括的な経済改革プラン「Vision2030」を高らかに謳いあげ、2030年までに非石油収入を6倍超に増やすといった改革案を提示しています。

2014年秋以降の原油価格の低迷で、国民の7割を占める公務員からなる中間層の生活は苦しくなる一方であり、失業率も12%に上昇。財政赤字が積み上がる中で、構造改革を実現できる次世代のリーダーとしてムハンマド副皇太子に期待する声は高かったといえるでしょう。また、外交面でも、イランに対して徹底した強硬姿勢を取り、一部で緊張激化を懸念する声は出たものの、サウジ国内でムハンマド副皇太子の強力なリーダーシップを賞賛する声が多かったのも事実です。

しかし、そのムハンマド副皇太子が直面したのが、足元の「抵抗勢力」です。人口3100万人のサウジには1万5000人とも2万人とも言われる王族がいますが、ありとあらゆる利権に特権階級の王族が関与しているのが常識とのこと。

ムハンマド氏の目玉政策であるサウジアラムコのIPOも、上場によって財務情報を含めた情報開示を徹底させることで利権を透明化する狙いがあったと言われていますし、また、娯楽産業の解放や女性の自動車運転の解禁等、ムハンマド氏が開明的な政策を打ち出せば出すほど、守旧派の王族や宗教界からの反発が強まっていました。

つまり、コンセンサスを重視するあまり遅々として改革が進まないことに業を煮やしたムハンマド氏が、国内での膠着状況を打破すべく、皇太子就任後わずか4ヶ月にして、前国王派を中心とする抵抗勢力を一掃して権力基盤を強化すべく、一気呵成に前例のない強硬策に踏み切った-。これが今回の粛清劇だと考えられます。

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サウジアラビアの最高委員会(supreme committee)

11月4日にサウジアラビアで始まった大規模な腐敗摘発ですが、粛清の端緒は、摘発直前にサルマン国王が発表した以下の内容の勅令でした。

第一に、皇太子をトップとする「最高委員会」(supreme committee)を創設する。メンバーは、監視捜査委員会委員長(Chairman of the Monitoring and Investigation Commission)と国家腐敗防止委員会委員長(Chairman of the National Anti-Corruption Authority)、監査局長(Chief of the General Audit Bureau)、検事総長(Attorney General)と国家保全省長官(Head of State Security)である。

第二に、最高委員会は、法令・規制の制限を受けることなく(Exemption from laws)、以下のタスクを遂行する。

❶腐敗に関与した個人・法人、犯罪・違法行為を特定すること
❷捜査、逮捕状の発布、海外渡航禁止、銀行口座・資産の開示と凍結、資金・資産の追跡、海外送金の防止。委員会は、捜査機関・司法機関に委ねるまでは、あらゆる保全措置を講ずることが可能であり、国の内外を問わず腐敗に関わる資産を国庫に戻し国有財産として登録することが出来る。

第三に、委員会は捜査・訴追等のチームを編成でき、権限を委任することが出来る。

第四に、委員会は義務を完了した暁には、詳細な報告書を提出しなければならない。

第五に、この命令は関係省庁に周知徹底されなければならず、全ての関係者は完全に協力しなければならない。

サウジ国営ニュースサイト「アル・アラビヤ」に基づいて作成
http://english.alarabiya.net/en/News/gulf/2017/11/04/Saudi-Crown-Prince-to-head-a-new-committee-to-combat-corruption.html

この国王勅令によると、ムハンマド皇太子が率いる最高委員会はあらゆる法令の制約を受けないで、捜査・逮捕から資産没収に至るまで超越的な権限を行使できる機関とされています。この点から、一部には今回の粛清劇を、超法規的に権力を再強化する非常手段が取られたという意味で、「逆クーデター」と呼ぶ向きもあります。軍部等が超法規的に権力を簒奪するクーデターとは逆にベクトルが働く非常事態という訳です。

しかし、サウジは絶対君主制の国家であり、超越的な権限を行使するとはいっても、国王大権に由来した権限を行使しているに過ぎません。その意味では政治的粛清(Political Purge)の一環に過ぎないという方が正確でしょう。

その意味で興味深いのが、今回の摘発主体となっている組織が「supreme committee」という名称になっていること。

日本メディアの多くは、これを「汚職対策委員会」や「反腐敗委員会」と訳出していますが、実際には「至高性」を正面から掲げている名称であることは見落とせないポイントだと思います。この組織の権限規定自体は、例えばインドネシアのKPKなどの腐敗摘発機関のものと大した違いはないのですが、絶対君主国家における国王大権に由来して超法規的措置を取るという性格を如実に表しているのが、この「最高委員会」という名称だと思われます。

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サウジアラビアの腐敗摘発

11月4日、サウジアラビアで突如、大規模な腐敗摘発が始まりました。ムハンマド・ビン・サルマン皇太子(Mohammed bin Salman)(32歳。通称MbS)が主導し、サウド家の王子11人、閣僚4人を含む数十人がいっせいに拘束されたと伝えられています。

https://english.alarabiya.net/

拘束された者の中には、

  1. アブドラ前国王の息子であるムトイブ国家警備相
  2. 有力者のファキーフ経済計画相
  3. 著名な大富豪投資家アルワリード・ビン・タラル王子
  4. 大手建設会社会長のバクル・ビン・ラディン氏

が含まれています。前国王に近い王族・有力者や、あるいはMbSの皇太子昇格(2017/6/21)に異を唱えた関係者が含まれていることから、ムハンマド皇太子に権力を集中させるための「政治的粛清」という側面が強いといえます。

サルマン国王が勅令を出して「最高委員会」(supreme committee)を創設した直後の粛清劇に、世界中で衝撃が走っています。

摘発は現在も続いており、拘束されている人間は200人超、凍結された銀行口座は330億ドル(約3兆7000億円)超と報じられています。現地系メディアによっては拘束者が千人を超えているとしているところもあり、予断を許さない状況です。

今回拘束されたのは、賄賂を「もらった側」の王族・有力者ですが、次の段階では賄賂を「贈った側」に捜査の焦点があたらないとは限りません。サウジアラビアビジネスにコミットしている企業にとって、リスクが大きく変動する重大局面を迎えているといっても大げさではありません。

最新のサウジアラビア情勢を踏まえて、今回の粛清劇が何を意味するのか、今後どうなっていくのかについて、次回のBERC「外国公務員贈賄罪研究会」で分析します。

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タイと外国公務員贈賄罪

今月のBERC「外国公務員贈賄罪研究会」は、タイ特集です。

タイといえば、「腐敗防止法」が2年前に改正され、

❶贈賄罪・外国公務員贈賄罪(5年以下の懲役・10万バーツ以下の罰金)
❷収賄罪・外国公務員収賄罪(死刑・終身刑・5年以上20年以下の懲役・10万バーツ以上40万バーツ以下の罰金)
❸法人責任(両罰型、適切な内部措置を講じていないことが要件)=賄賂額の2倍以下の罰金

が追加されました(Organic Act on Counter Corrpution, No.3 B.E. 2558(2015))。2011/3/31にタイがUNCAC(国連腐敗防止条約)に加盟してから4年、ようやくタイにも外国公務員贈賄罪が導入された訳です。

この改正によって腐敗防止法は、「国家汚職防止委員会」(National Counter Corruption Commission :N.C.C. Commison または National Anti-Corruption Commision:NACC)の設置法と一部の汚職関係犯罪にとどまらず、実質的な贈収賄罪の実定法として機能するようになりました。

タイ政府は、国家戦略として「第三次腐敗防止国家戦略」(Natioanl Anti-Corrupution Strategy –Phase 3 (2017-2021))を策定しており、実際に35個の政府プロジェクトでIntegrity pactが締結されたほか、2015/7/21には「免許付与手続法」(Licensing Facilitaiton ACT)が制定されるなど、ビジネス環境の整備が着々と進んでいます(ちなみに、第三次腐敗防止国家戦略における戦略的目標は、「CPIの上位50%に入る」ことだと規定されています。なんとも分かりやすい目標ですね)。

今回の外国公務員贈賄罪研究会では、タイに進出している日本企業2社による事例発表とともに、タイの腐敗防止制度について解説していきたいと思いますが、タイ・ビジネスで重要なのは、もちろんそういったことだけではありません。

日本企業とタイの腐敗については、なんといっても2009年の「西松建設事件」が記憶に新しいところです。

2003/7、西松建設が現地の「イタリアン・タイ・ディベロップメント社」(ITD)とJVを組んで、バンコク都庁の「洪水対策トンネル工事」を落札(66億円)した際に、4.8億円相当の賄賂が供与されたのではないかという疑惑です。報道によると、うち3.5億円が政府高官、1.3億円が汚職監視機関に渡され、西松建設は2.4億円を負担したとも伝えられています。

2008/6/4に東京地検特捜部が外為法違反の容疑(裏金7000万円の持ち込み)で西松建設本社を家宅捜索し、翌2009/1/14には、社長(元管理本部長:経理統括)・腹心の副社長らが外為法違反で逮捕されました(なお法人も略式起訴されており、罰金100万円が確定しています)。

重要なのは、バンコク都庁の公務員(政治家)すなわち外国公務員への贈賄として、外国公務員贈賄罪事件の捜査も進んでいたという点です。

タイ側も2009/4/21には、前述した 「国家汚職防止委員会」(NACC)に特別捜査委員会を設置し、日タイ両国で同時進行的に捜査が進みましたが、結局、「外国公務員贈賄罪」での立件はなされませんでした(なお、日本の国税庁は6億円を追徴課税しています)。

2009/5/15に公表された、西松建設の内部調査報告書によると、

①海外ペーパーカンパニーで裏金9億円(うち4.7億円が使途不明)を捻出した。
②そのうち、日本に3.3億円持ち込み、うち1.4億円を海外事業副部長が着服した。
③タイでは、JV現地企業に2.2億円を仲介手数料として渡した。

とのことでしたが、2.2億円の「仲介手数料」の賄賂性についての判断はなされないままで終わってしまった訳です。

それはなぜだったのか。

色々な見方ができると思いますが、一つには、この事件は、タイでの贈賄疑惑と別に、日本国内での政治献金事件の流れに棹さしていたという事情があります。政治家の資金管理団体への企業献金は1995年の法改正で禁止されましたが、その後に西松建設が生み出した「個人献金を偽装した政治家の資金管理団体への企業献金スキーム」が当時、捜査の焦点になっていました。西松建設が新設した「特別賞与加算金」(11億円相当)を原資とする5.9億円が二つの政治団体に流れ、そのうち4.8億円が政治献金やパー券購入の名目で政界に流れたのではないかということで、日本中が大騒ぎになった事件です。ここでは詳細に立ち入りませんが、その一連の過程で、傍流たる「外国公務員贈賄罪としての立件」が見送られたという事情は指摘できると考えられます。

もう一つは、タイの国内事情です。2003年当時のバンコク都知事だったのはサマック氏(Samak Sundaravej)。後に首相に昇りつめるサマック氏が事件捜査当時どのようなポジションにいたかを、タイ政治史の中で位置付けることが、背景事情の理解には必要です。1997年の憲法改正で小選挙区制が導入されたことを契機に、今に至るまで20年に渡って継続しているタイ政治における「タクシン派と対抗勢力の争い」が始まったと言える訳ですが、その流れの中でサマック氏が果たしてきた役割の分析が重要だと考えられます(これ以上は研究会で検討したいと思います)。なお、反タクシン派がタクシン派打倒の手段として度々利用したのは、皮肉にも同じ1997年の憲法改正が導入した憲法裁判所と汚職防止委員会でした(両者の争いに起因する混乱が制御しきれなくなると軍部がクーデタを起こしタクシン派政権を潰すというループが続いていますが、潰すたびに、タクシン派が強固になっているような気がします。2017/9/23にはタクシン氏の妹であるインラック前首相が、コメ担保融資制度の導入で国庫に莫大な損失を与えたということで汚職防止委員会によって追及され、遂に国外逃亡しました。しかし、今なお両勢力の争いに最終的な決着がついた訳ではありません)。いずれにせよ、タクシン派を巡る激しい抗争の中で、「バンコク都庁公務員」への贈賄疑惑がかき消されてしまったのではないかと思われます。

それにしても、日本とタイ双方で同じように既存勢力(establishment)に闘いを挑んだ二つの政治ベクトルが、西松建設を交点として偶然にもクロスした時に、日本とタイを舞台とする外国公務員贈賄罪疑惑がふと浮かび上がった—。これが、西松建設タイ事件だったのかもしれません。そうだとしたら、その儚い事件が、圧倒的な政治的熱量を有した政治的闘争の中で立件されることなく消えていったのは、ある意味では仕方がなかったと言えるでしょう。

 

 

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比例選出国会議員の「政党間の移動禁止」

10月22日の総選挙は、自公の圧勝、希望の完敗、立憲民主の躍進に終わりました。

9月25日に開かれた安倍総理の解散表明会見の機先を制するように、小池百合子東京都知事が新党「希望の党」代表就任を発表した時、日本中がまさかの政権交代を期待する興奮に包まれたと言っても過言ではありませんでした。自民党と切磋琢磨する、改革保守政党がいよいよ誕生するかという期待が高まった訳です。

しかし、解散当日の9月28日、民進党の両院議員総会で前原代表が希望の党との「事実上の合流」を提案し了承された時から、歯車が狂い出しました。小池知事が翌日「排除します」と発言しましたが時既に遅しで、「排除の論理」という言葉が一人歩きし、希望の党は強い批判にさらされ、勢いが急速に衰えてしまいました。

代わって台頭したのが、枝野幸男氏が中心となって結党された立憲民主党です。「排除される側」の演出に判官贔屓の追い風が吹き、野党第一党の座は立憲民主党が獲得することになった訳です。

開票結果を受けて、民進党の前原代表が辞意を表明し、希望の党への合流路線は結局ご破算になり、希望の党がもう一度勢いを取り戻すのは現状では難しいと言わざるを得ません。また、民進党に所属しながら、今回の総選挙には無所属で出馬したベテラン有力議員は多数います。この不安定な状況が一時的なものであることは明白であり、野党再編の動きは必至と言えます。

では、どのような野党再編が起きるでしょうか。幾つかのシナリオを想定し、「比例代表選出議員の政党間移動禁止のルール」と、「政党交付金の分配ルール」を踏まえて、実現可能性を検討した小稿を現代ビジネスに寄稿しましたので、お読みいただければ幸いです。

「「野党再編」の動きは、この2つのルールを知れば読み解ける
  政界再編を裏から縛っているもの」

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53303

 

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週刊エコノミスト「ベトナムで相次ぐ汚職摘発 日本企業復権への好機にも」

ベトナムで相次ぐ汚職摘発について、10月10日発売の週刊エコノミスト(毎日新聞出版)に、「エコノミストリポート」として論考を寄稿させて頂きました。

ドイツで白昼の拉致事件 ベトナムで相次ぐ汚職摘発 日本企業復権への好機にも」というものです。

https://www.weekly-economist.com/20171017contents/

このエコノミストリポートでは、

  • なぜ、タイン氏はベルリンで拉致されたのか。
  • なぜ、ベトナムで今、汚職摘発の風が吹き荒れているのか。
  • ズン首相の失脚はどう関係しているのか。
  • ペトロベトナム(PVN)とペトロベトナム建設(PVC)の捜査の行方は?
  • 日本企業の取るべき策とは(ESG投資・国連グローバルコンパクト10・インテグリティ)

といった問題について、現時点での私の考えを書いてみましたので、お読み頂ければ幸いです。

特に注目されるのは、タイビン省の火力発電所建設プロジェクト(第2発電所)です。このプロジェクトで不正な会計処理を行ったとして、9月末にPVNの会計責任者をはじめとする4名のPVN、PVC関係者が逮捕され、更にPVC幹部3名も拘束されています。

日本の円借款によるODA事業として、送電線建設事業と合わせてこれまでに合計1220億円のODA資金が投入されているタイビン省の火力発電所ですが、第1発電所の案件は丸紅が単独受注、第2発電所は東芝と双日が受注したものです。

その案件がまさに今、ベトナム政府による汚職摘発の舞台になりつつあります。

7月23日のベルリン拉致事件は、実は、日本企業にとって看過できない「レッド・フラッグ」だった訳です。

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ベトナムで吹く汚職摘発の風

ベトナムで今、汚職摘発の風が吹き荒れています。

ペトロベトナム建設元会長のチン・スアン・タイン氏が「出頭」したのと同じ7月31日、ハノイで汚職摘発に関する「汚職防止中央指導委員会」(Central Steering Committee for Anti-Corruption)の第12回会議が、ベトナム共産党の最高指導者であるグエン・フー・チョン(Nguyễn Phú Trọng)書記長によって開催されていました。

タイン氏はいわばその人身御供、と言うと語弊があるかもしれませんが、いまベトナムで吹き荒れている汚職摘発の最重要ターゲットが「ペトロベトナム」と「ペトロベトナム建設」であることから、何が何でも身柄を押さえたかったのだと考えられます。

もちろん、ベトナム政府の基本政策として、汚職摘発の推進は確固たる地位を占めていることは間違いありません。例えば、2011年1月の 第11回共産党全国党大会で承認された「2011〜2020年社会経済開発戦略」は、次のように規定しています。

  1. 汚職や浪費の防止・排除の促進

汚職や浪費の防止・排除を断固として効果的に実施することは、共産党と国家の建設にとって重要で緊急で長期的な課題である。法律と管理体制を完成し、公務員の人格を向上させる。民主主義、透明化を実施し、監視活動を強化し、国民が国家の資産と予算の使用を監査できるように監査制度を作る。専門機関の能力を向上させ、汚職と浪費の行為を厳しく処罰し、国家の経済発展に応じて公務員の給与制度を改革する。汚職と浪費の摘発・防止におけるベトナム祖国戦線、各団体、国民、マスコミの役割を発揮する。

同じ社会主義国家である中国と同様に、汚職は人民の支持を失わせ共産党の支配を揺るがすことになりかねませんので、汚職摘発は、社会主義国家にとってプライオリティーが高い政策です。

しかし、今回の拉致劇の背景には、そうした一般的な事情とは異なるものが潜んでいると思われます。

それは、昨年のズン首相失脚です(この点についての詳細は別の機会に書きたいと思いますが、権力闘争の一環であるとの視点は極めて重要です)。

いずれにしても今回のベルリン拉致事件、日本ではあまり知られていませんが、現在の腐敗防止に関する国際潮流の中で、極めて重要な事件であると考えられます。

なお、ベトナムの汚職摘発で興味深いのは、収賄罪(刑法279条)や贈賄罪(289条)ではなく、「自己の職務を濫用し経済管理に関する国家規則を故意に侵犯して、重大な被害を引き起こした」(165条)というベトナム版特別背任罪が用いられていること。単に職権を濫用して損害を与えただけでは不十分で、「国家規則の違反」がないといけないという点です。

今回のチン・スアン・タイン氏の摘発に関して、本来使用してはならない公用車向けの「青ナンバープレート」を自分の私用車に装着していたことが喧伝されているのは、そのためでしょう。

ちなみにチン・スアン・タイン氏の車はレクサス(Lexus)の最上位SUVであるLX。ベトナムでのLX570の標準価格は53億5400万ドン(約2590万円)なので、相当な高級車ということになります。ドイモイ政策がもたらした経済成長の影には、圧倒的な経済格差が広がっている現状があります。

都市部(ハノイ・ホーチミン)との格差が拡大する地方

 

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韓国・金英蘭(キムヨンラン)法の射程と影響

今月のBERC「外国公務員贈賄罪研究会」は、韓国特集です。

韓国といえば昨年2016年9月28日に施行された「金英蘭法」(キムヨンラン法)が注目を集めています。金英蘭法といえば、民間人ジャーナリストや私立学校の先生を「公職者等」(公務員)に含めたことによって、全世界に衝撃を与えたことは記憶に新しいところです。

アップルが企業イベントWWDC2017への招待対象から韓国メディアを除外する等、グローバル企業の広報体制にも大きな影響を与えつつある金英蘭法。実は、適用対象が一部民間人にも拡大されているという民民贈収賄防止の流れに棹さしているだけではなく、内部告発や報奨金の規定も含めて、多くの示唆を与えてくれるものです。

そこで、今回の外国公務員贈賄罪研究会は、韓国に進出している企業による事例発表を中心として、金英蘭法について詳細に検討を加えていきます。ソウルで取材した最新情報もお届けしたいと思います。

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なぜ男はベルリンで拉致されたのか

7月23日、ベルリン中心部で一人のベトナム人男性が、武装した集団に拉致されました。

拉致された男の名前はチン・スアン・タイン(Trinh Xuan Thanh)氏。国営ベトナム石油ガスグループ(ペトロベトナム)傘下の建設会社「ペトロベトナム建設」(PetroVietnam Construction Joint Stock Corporation:PVC)の会長として、ハウザン省人民委員会副委員長や国会議員にも就任するなど権勢を振るっていた人物です。

http://www.afpbb.com/articles/-/3138009

タイン氏を拉致したのはベトナム情報部でした。実はタイン氏は、汚職の嫌疑でインタポールによる国際指名手配中であり、ドイツ政府に亡命を申請していた人物だったのです。

自国の領域内で、亡命申請中だった人物を拉致されたドイツ政府は激怒、ベトナム大使館関係者をペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物:Persona non grata)に指名し国外退去させるという報復措置を講じました。

拉致されたタイン氏は、10日後、ベトナムに姿を現しました。国営ベトナムテレビに出演し、虚ろな目で「自ら出頭した」と証言したのです(ビデオ出演)。拉致事件の関係者がチェコ当局によって逮捕され、既にドイツに引き渡されているとも伝えられています。チェコ経由でベトナムに強制連行された可能性が高いと思われます。

「自首した」と伝える国営ベトナムテレビジョン(VTV)

http://vtv.vn/trong-nuoc/ong-trinh-xuan-thanh-toi-da-ra-dau-thu-20170803190749407.htm

ちなみにドイツですが、ベルリンの壁が崩壊する前の東ドイツ時代、同じ社会主義国家ということでベトナムから留学生だけでなく、多くの労働者が東ドイツに出稼ぎに行っていた関係で、今でも一定のベトナムコミュニテイが存在しているとのことです。タイン氏が第二の人生を送ろうとしたドイツから拉致された際の絶望は、察するに余りあります。

なぜ、タイン氏はベトナム政府によって拉致されたのでしょうか。実はその背景には、ベトナムで今吹き荒れようとしている風があります。日本企業も巻き込まれるかもしれない、その風はいったいどういうものなのか。その詳細は、また次の機会に。

 

 

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「中間報告」とは何か

本日(6/15)の早朝、テロ等準備罪法案(いわゆる共謀罪の趣旨を取り組んだ組織犯罪対策処罰法改正案)が参議院本会議にて可決され、成立しました。

賛成165票、反対70票。「牛歩戦術」をとった野党議員3名の投票が議長の議事整理権(国会法19条)に基づく「時間制限」を超えたため、投票しなかったことにされました(「無効」ではありません。ちなみに他に4名の議員が投票していません)。

今回の法案採決の手続きで注目を集めたのが、法務委員会での採決を経ないで本会議で採決をするという、「中間報告」という手法。これは、国会法第56条の3が規定している手続きです。

国会法第56条の3

各議院は、委員会の審査中の案件について特に必要があるときは、中間報告を求めることができる。

○2  前項の中間報告があつた案件について、議院が特に緊急を要すると認めたときは、委員会の審査に期限を附け又は議院の会議において審議することができる。

第1項は、審査を付託した委員会で審査をしている最中の案件について、特に必要があるときに、その段階での審査状況の報告を求めることができると規定しています。これが「中間報告」です。

そして、その中間報告があった案件は、「特に緊急を要する」と認められる場合、議院の会議(つまり本会議)で審議することができると、第2項が規定しています。これが今回用いられた手続きです。

国会法の規定によれば、「特別な緊急性」という要件の認定主体は「議院」ですから、すなわち、議院による判断が下されれば、中間報告を踏まえた本会議での審議(採決を含む)が出来るという制度設計がなされていることがわかります。

実際に今回の法案審議では、6/15深夜(2:31開始)の本会議でまず①「中間報告を求めることの動議」が提出され、3人の参議院議員(民進・藤末健三議員、共産・辰巳孝太郎議員、維新・浅田均議員)による討論を踏まえて採決がなされました。結果は、

白色票(賛成)          百四十八票
青色票(反対)            九十票

で可決されました。次に、②法務委員長(公明・秋野公造議員)が中間報告を行い、続いて③「中間報告があった本改正案を直ちに審議することの動議」が出され、2人の議員(民進・田名部匡代議員、共産・井上哲士議員)による討論を踏まえて採決が行われました。結果は、

白色票(賛成)          百四十九票
青色票(反対)            九十票

で、この動議も可決されました。この①〜③の議会プロセスを踏まえて、本番たる④「中間報告があった本改正案の審議」が最終的に、2名の議員(民進・小川敏夫議員、共産・仁比聡平議員)による質疑と政府側答弁(金田勝年法務大臣、松本純国家公安委員長、岸田文雄外務大臣)、更に4名の議員(民進・蓮舫議員、自民・西田昌司議員、共産・仁比聡平議員、維新・東徹議員)による討論を経て、採決に付されました。その結果は、

白色票(賛成)          百六十五票
青色票(反対)            七十票

で、法案が賛成多数で可決されたということになります。

したがって、以上の立法プロセスを見てわかる通り、少なくとも形式的には、国会法の規定からすると手続き上の瑕疵があると言える訳ではありません。野党側が反発をしたのは、一連の法務委員会での議論の時間や内容を考慮すると、「特別な緊急性」の実質が認められないのではないかという問題だろうと思われます。今回の経緯からすると、通常国会の会期末が迫っていたという事情が「特別な緊急性」に該当すると言えるのか、まずは考えてみる必要がありそうです

この点に関しては、

(二) 中間報告後直ちに議院の会議において審議した例

第十六回国会 昭和二十八年八月四日の会議において、電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律案につき、労働委員長栗山良夫君から委員会の審査の経過について中間報告があった後、小林英三君外一名提出の「労働委員長から中間報告があった電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律案を国会法第五十六条の三の規定により本会議において審議することの動議」が可決され、議長河井彌八君は、直ちに同案を議題としたが、 寺尾豊君の動議により延会することに決した。翌五日同案の審議に入り、質疑、討論の後、同案は可決された。

というケースが参議院での先例とされています(出典:参議院事務局「平成二十五年版参議院先例録」332頁)。

この第16回国会(特別国会)の会期末は昭和28年 8月10日だったので、この時の中間報告は、会期終了日まで「6日」というタイミングでした。

これに対して、今回の国会(193回通常国会)の会期終了日は6月18日。つまり、本日の「中間報告」は会期終了まであと「3日」というタイミングだった訳です。

「特別な緊急性」という要件を、「時間的な切迫性」を重視する観点から考えると、「先例」として引用される案件の半分の時間的猶予と言え、許容されるように思われます。

ただし、「特別な緊急性」を、それ以外の要素、たとえば法案の重要性や、付託委員会における審議の成熟度、上程の必要性、法案を可決・成立させるタイミングに対する社会的期待といった要素も考慮するならば、必ずしも許容されるとは言えないということも可能かもしれません。

しかし、そうした多元的な事情に対する評価はそれぞれです。議院内閣制を前提とする限り、政府与党と野党とで異なる評価があることは当然に想定されます。時間的な切迫性以外の要素については、それこそ、その妥当性を巡って全国民の代表である国会議員が議会で議論して決するべきであり、国会法第56条の3が「議院の判断」に委ねているのはそれゆえではないかと思われますが、いかがでしょうか。

 

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コミーFBI長官の電撃解任

5/9、FBIのコミー長官が電撃的に解任されました。ホワイトハウスの声明は、次のような内容です。

The White House
Office of the Press Secretary
For Immediate Release
May 09, 2017
Statement from the Press Secretary

Today, President Donald J. Trump informed FBI Director James Comey that he has been terminated and removed from office. President Trump acted based on the clear recommendations of both Deputy Attorney General Rod Rosenstein and Attorney General Jeff Sessions.
“The FBI is one of our Nation’s most cherished and respected institutions and today will mark a new beginning for our crown jewel of law enforcement,” said President Trump.
A search for a new permanent FBI Director will begin immediately.

https://www.whitehouse.gov/the-press-office/2017/05/09/statement-press-secretary-1

コミー長官が今回「ターミネイト」されてしまった理由ですが、現時点での報道によると、

  1. ヒラリー・クリントン候補の私用メール問題に関する大統領選挙中のコミー長官の判断は「重大な誤り」だったとするレターを、ローゼンスタイン司法副長官がセッションズ司法長官に送った。ローゼンスタイン司法副長官は、コミー長官の一連の対応は「検事や捜査官が教科書でしてはならないと教わる典型例」だと批判した。
  2. セッションズ司法長官がこれを受けて、「FBIの指導部は新鮮なスタートが必要だ」と助言するレターをトランプ大統領に送った。
  3. ヒラリー・クリントン氏が5/2、NYの集会で「私が敗北した理由は最後の10日間におきた出来事のせいだ。もし投票が10月27日だったら、私が大統領になっていた」と恨み節を漏らした。
  4. トランプ大統領が5/9、コミー長官解任に踏み切った。

という経緯が伝えられています。

http://www.jiji.com/jc/article?k=2017051000225&g=int

ローゼンスタイン司法副長官(Rod Rosenstein)といえば、トランプ大統領に解任されたサリー・イエーツ司法長官代行(兼司法副長官)の後任として、1月に指名され、4/25に議会承認が下りたばかりの人です。長いことMarylandの連邦地区検事(DA)を務めていましたが、晴れてDOJ副長官に就任して最初の大仕事が「コミーFBI長官を更迭すること」になった(なってしまった)訳です。

ちなみに、前任のイエーツ副長官は、ヒラリー寄りだったリンチ(前)司法長官が去った後、暫定的に司法長官職を代行している僅かな期間のうちに、①イスラム7カ国からの入国を一時的に制限する大統領令の合法性に疑問を呈するメールを司法省内に送付しただけでなく、②トランプ陣営幹部が選挙期間中にロシア政府関係者と接触していた証拠となる電話盗聴記録をリークしたと報じられている人物です。

我が国の官僚であれば、配置転換前に一時的なポストに就任した場合はじっとしてなにもしないのが普通でしょう。また、政治の世界でも、内閣が総辞職した後、次の内閣が成立するまでの間、行政の継続性の観点から職務を執行する「職務執行内閣」というのがありますが、この職務執行内閣では、政務三役は粛々と業務を執行するだけで新しいことはしないというのが通例だと思われます。それに比べると、サリー・イエーツ氏の戦略的な「後足で砂をかける」技は凄いものがありました。

ともあれ、ヒラリーのメール問題に対する捜査を再開させたことで、「結果として」トランプ大統領当選の立役者となったコミーFBI長官ですが、政権発足後も、トランプ陣営幹部が選挙期間中にロシア政府関係者と接触した問題(いわゆるロシアゲート)の捜査を続行し、トランプ政権の悩みの種になっていました。

「このままほっておくとコミー長官がトランプ政権の獅子身中の虫になる」と考えたのかどうか、トランプ大統領がついに長官解任に踏み切った訳ですが、ワシントンでは「司法妨害ではないか」という大きな波紋が広がっています。

ニクソン政権下のウォーターゲート事件における「土曜日の夜の虐殺」の再来だと指摘する声も出ている今回の解任劇について、ウェブサイト「法と経済のジャーナル」(AJ)に論考を連載することになりました。解任理由とされた「ヒラリー元国務長官のメール問題捜査」の検証を皮切りに、ロシアゲートから政治権力と法執行機関の関係まで、いろいろと考えて行きたいと思います。

http://judiciary.asahi.com/fukabori/2017051900003.html

 

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テロ等準備罪(いわゆるconspiracyとしての共謀罪)と司法取引、おとり捜査

テロ等準備罪の議論が国会で行われています。組織犯罪対策において、いわゆるconspiracyとしての「共謀罪」の適用と並んで多いのが、「司法取引」と「おとり捜査」。後者のうち、犯意誘発型は違法とされており、日本ではまだ解禁されていませんが、前者はすでに立法の手当て済みです(施行は来年)。今国会でテロ等準備罪が成立した場合、いずれ焦点となるのは「おとり捜査の全面解禁の可否」となるでしょう。

麻薬取引等の組織犯罪の場合、組織に潜入しつつ協力者を作るというタイプの捜査では、司法取引とおとり捜査はある意味で不可欠の手法です。潜入捜査官の立場は弱く、司法取引・証人保護等の特権を与えないと最終的な協力者を得ることは難しいからです。企業犯罪である営業秘密の窃取の場合もほぼ同様です。

これに対して、外国公務員贈賄罪の場合、一方当事者である収賄側は、現地において実際に公権力を行使する、正統に選出・任命された公務員であることが前提ですので、そこへの潜入というのは想定し難く、また、仮におとり捜査が可能であったとしても、捜査関係者が外国政府の公職を詐称することになる不具合があります。ただし、その場合でも、アルストム事件以降に顕著になってきた贈収賄に関する国際捜査協力体制の下では、賄賂工作が行われる当該外国の捜査機関が協力しておとり捜査が遂行される可能性がないとは言えません。

いずれにせよ、外国公務員贈賄罪の分野で「おとり捜査」が本格化するようになったら、グローバル企業のコンプライアンス確保はまだ一段高い水準を要求されるようになるでしょう。

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サリー・イエーツ司法長官代行の解任劇

2017/1/30、トランプ大統領が司法省(DOJ)のサリー・イエーツ(Sally Q. Yates)司法長官代行を解任したと報じられました。

https://www.nytimes.com/2017/01/30/us/politics/trump-immigration-ban-memo.html

トランプ大統領による「イスラム圏7カ国出身者らの一時入国禁止」を命じた大統領令を支持しないように、イエーツ長官代行が司法省内で通知したことに対する厳しい処分です。

イエーツ氏はもともとオバマ政権でDOJの副長官に任命され、リンチ前司法長官を支えていた人物で、FCPA摘発にあたって企業の執行役員・幹部等の個人責任にフォーカスをあてる新しい捜査指針「イエーツ・メモ」を発表したことで知られていました。トランプ政権の発足に伴ってリンチ長官が退任した後、セッションズ上院議員が新しい司法長官として議会承認を得るまでの間、司法長官代行(acting Attorney General)の地位にあった訳です。

トランプ政権発足後に繰り出され物議をかもしている大統領令に対して、「遂に現役の政府高官が公然と反旗を翻し、それに対して直ちに報復措置が講ぜられたこと」に衝撃が走っていますが、ある意味では当たり前の推移です。

2016年の大統領選挙で、当初優位に立っていたクリントン候補が敗北したのは、私設メールサーバー(clintonemail.com)を使った私用メール問題に対するFBIの捜査が二転三転し、社会の批判を浴びたことが主因の一つです。FBIによる捜査にストップをかけたと報じられているのがDOJのリンチ長官(当時)。コミー長官率いるFBIは泣く泣く捜査を終結させましたが、別の捜査(アンソニー・ウィーナー事件)でクリントン側近のフーマ・アベディン氏のPCから新証拠が見つかったとして、捜査を再開させました。この捜査再開の衝撃が、一時は10ポイント近く支持率で負けていたトランプ候補を復活させたのでした。FBIによる再捜査はわずか8日で終結(再終結)させられましたが、一連の経緯が(少なくとも、結果として)トランプ候補を後押しすることになったのは否定できないところでしょう。ちなみにFBIのコミー長官は、政権交替後、早々と「留任」が決まったと報じられています。

イエーツ長官代行がDOJを去るというのは既定路線の話であり、もともとセッションズ新長官が承認されるまでの僅かの期間、長官代行の職に就いていたに過ぎません。驚きだったのは、大統領令とそれに対する各地での抗議活動の盛り上がりの機を逃さず、サリー・イエーツ氏が「大統領に逆らって解任される」という「劇」を見事に演じ切ったことだと言ったら、言い過ぎでしょうか。

 

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トランスペアレンシー・インターナショナルがCPI2016を発表

2017/1/25、トランスペアレンシー・インターナショナルが最新版の「汚職認識指数2016」(CPI2016)を公表しました。 http://www.transparency.org/news/feature/corruption_perceptions_index_2016

トランスペアレンシー・インターナショナル(Transparency International: TI)とは、世界銀行の局長だったピーター・アイゲン氏が創立した、腐敗防止に取り組む世界で最も権威のある国際NGOです(本部ベルリン)。

そのトランスペアレンシー・インターナショナルが毎年発表しているのがCorruption Perceptions Index、通称CPI。これは、各種の調査報告・統計資料等に基づいて、世界各国の「公的部門」(public sector)の腐敗度合いを点数化したランキングで、大手企業等によるリスクマネジメントの基礎資料として採用される事が多いデータです。

2016年版CPI(対象国:176カ国)で1位になったのは、デンマークとニュージーランド。最下位はソマリアでした(10年連続)。アジア太平洋地域に絞ってみますと、ランキングは次の通りです。

CPI算定の基礎データとなるのは世界銀行等による過去2年間の調査結果なので、個別的事案とCPI算定との間にはライムラグがあります。したがって、順位(点数)の変動と個別案件の因果関係を推定することは難しいのですが、概ね次のようなことがいえるかもしれません。

まず、日本が18位から20位に後退したのは、国交省や厚労省といった中央省庁レベルでの贈収賄事件摘発があった他、中央・地方レベルでの政治家に関わる利益供与案件が摘発されたことが影響しているものと思われます(ただし、日本全体の中長期的トレンドを見ると贈収賄の立件数は減少傾向にあることは事実です。例えば過去20年でいうと「贈賄罪の送検人員」は平成10年(1998年)の273人をピークに、平成27年(2015年)は42人まで激減しています)。いずれにせよ短期的には、日本の「腐敗度」は上がったと評価されている訳です。

他方で、例えばミャンマーは昨年の147位(22点)から136位(28点)に上昇していますが、これはアウン・サン・スー・チー(Aung San Suu Kyi)外相兼大統領府相兼国家顧問が積極的に腐敗防止に取り組んでいることが評価されたのでしょう。

このように、デンマークをはじめとするトップ10とソマリアや北朝鮮が常連のワースト10の顔ぶれはあまり大きくは変動しないのですが、その間の「中間層」は細かく順位が変わっていることが分かります。

ところで上位層の特徴の一つが「公益通報保護」制度の充実です。トランスペアレンシー・インターナショナル日本支部(TI-J)の若林亜紀理事長が指摘しているように、「1位のニュージーランド、10位のイギリス、13位のオーストラリアなど英連邦の国々は公益通報保護などの腐敗防止法が整っており順位が高い」のです。日本でも、公益通報者保護制度の民間事業者ガイドライン(消費者庁)が改訂され、法改正の検討が進んでいますが、公益通報保護を「腐敗防止のグローバルな潮流」の中に位置付けて議論を深めることが必要でしょう。

http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/198188

また、武力紛争との関連を視野に入れることも重要だと思われます。若林理事長によると「北朝鮮、アンゴラ、スーダン、南スーダン、ソマリア、アフガニスタンなど腐敗認識指数の低い国ほど武力紛争が絶えないという相関」があるとのこと。この指摘は、極めて重要です。なぜなら地政学的リスク、カントリーリスクの分析は腐敗防止対策に欠かせないからです。

http://www.ti-j.org/CPI2016pressrelease.pdf

いずれにせよ、綱紀粛正の嵐が吹き荒れた中国(40点で79位)よりも現時点でランキングが低い国家(インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジア等)でのビジネスについては、腐敗関係のリスクに特段の注意を払うことが必要不可欠だと考えられます。

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FCPA摘発と共和党/民主党

FCPAの摘発動向についてですが、「民主党政権は積極的だったが、共和党政権は消極的になるのでは!?」という意見も頂きましたので、追加でコメントします。

下のグラフを見てもらうと一目瞭然ですが、政権が民主党(青)か共和党(赤)かという問題とFCPAの摘発動向は、直接的な関係はありません(なお、グラフの件数はDOJの執行分のみで、会計条項違反のみの案件が含まれるSEC執行分は含んでおりません)。

アメリカの司法省(DOJ)や証券取引委員会(SEC)は、アメリカ国内で「会合」を開いたり、米国銀行の口座を経由して「送金」したり、アメリカ人やアメリカ企業(ニューヨーク証券取引所等で上場している日本企業含む)と「共謀」をしたりしているといった事由をとらえてアメリカ連邦法の管轄権を主張し、FCPAの「域外適用」を押し進めてきましたが、摘発が激化したのは2007年頃からです。

今に至るその流れの先陣を切ったのは、ブッシュ(息子)政権(共和党)で司法長官に任命されたマイケル・ミュケイジー氏でした。続くオバマ政権(民主党)で任命されたエリック・ホルダー氏(史上初の黒人司法長官)もこの路線を受け継ぎ、2012年のガイドライン作成・公表の前後にいったん摘発が沈静化した時期を例外として、FCPAの域外適用による摘発件数は高止まりしたままです。共和党から民主党への政権移行の影響は伺えません。ここ1〜2年は、リンチ司法長官(黒人女性として初めて司法長官に任命)がFCAやRICOを使った「民間同士の利益供与」案件の摘発を積極的に進めたので、FCPAそのものを適用する案件の件数は若干減っていますが、ビジネス贈収賄の摘発状況は消極化している訳ではありません。

逆に、ミュケイジー以前の時代は、FCPAの摘発件数は低いままに推移していました。特にレーガン政権(共和党)は、反共の旗を掲げていればある程度の腐敗は黙認するという政策で、いわゆる開発独裁政権(developmental dictatorship)のやりたい放題を見過ごしていたとも言えますので(ただし中南米のドラッグ関係は別)、外国公務員(外国政府高官)に対する賄賂は黙認される傾向があったと言えます。

いずれにせよ、FCPAの摘発動向と、政権が民主党か共和党かは、直接の関係はないということが分かります。トランプが大統領に就任した今後、FCPAの摘発がどうなるかは、トランプ大統領自身の考えと、トランプ政権としての通商政策の具体策、そして(摘発鈍化を促す米系企業による)ロビー活動の成否による、というのが本当のところでしょう。

ちなみに、2007年頃に始まり現在まで続くこの潮流がなぜ始まったのかは、別の大きな問題です。その「因果関係」を明確に摘示することは難しいのですが、一言で言うと、2001年の「9.11テロ」後、主にFATF等の金融分野で構築されていったテロ資金対策の政策が背景にあること、そして海外贈賄に関する証拠収集(電子メール・SNS、送金・入出国に関する電子記録等)が以前と比較して相当に容易化し、かつ国際捜査共助が進展してきたことが指摘できると思います。

その意味では、トランプ政権でFCPA摘発が一時的に鈍化する可能性はあるとしても、アメリカを震源地としてここ10年ほど世界のグローバル企業を震撼させてきた贈収賄の摘発動向(国際潮流)は長期的には変わらないと言えるかもしれません。

短期的に怖いのは、中国企業と並んで、日本企業が「狙い撃ち」されることです。いち早く備えを強化している企業もありますが、ぼんやりしている所も多いのが実情です。贈収賄にかかわるリスクマネジメントの再点検は喫緊の課題でしょう。

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トランプ政権とFCPA

トランプ政権の誕生によってFCPAの摘発動向はどう変化するでしょうか。11月の米国大統領選挙以来この関係の質問が相次いでいましたので、現時点での考えをまとめて、「別冊宝島」に寄稿しました。先日発売された『別冊宝島2538 政府高官とFBIが明かす トランプの野望』(宝島社)です。ジョセフ・ナイ、フランシス・フクヤマ、エドワード・スノーデン、川村晃司氏、宮家邦彦氏、大野和基氏といった豪華な顔ぶれによる記事がたいへん面白いので、是非お読みください。

トランプ政権とFCPAを考える上でのポイントは次の通りです。

  1. 新しい司法長官に指名されているのは、アラバマ州選出のジェフ・セッションズ上院議員。セッションズ氏は検事出身で、企業犯罪の摘発自体は推進していくと思われるが、司法長官に抜擢された経緯からするとFCPA摘発積極策を取らない可能性がある。 もともとセッションズ氏は、過去にKKKを肯定的に語り、人種差別主義者として批判を浴びた人物。強硬な不法移民排斥論者で大麻解禁反対論者、つまり共和党最右派の保守派。そのセッションズ氏が司法長官に選ばれたのは、大統領選でいち早くトランプ支持を表明し、選挙戦で外交政策の立案を支えた論功行賞。したがって、セッションズ氏が司法長官になった場合、まず考えられるのが、上司であるトランプ大統領の意向が最大限に反映されるという可能性。
  2. トランプ自身はFCPAの改正派。2012年5月15日、CNBCのSQUAWK NEWS LINEでトランプは、世界最大の小売業者ウォルマート社のメキシコでのFCPA違反事件について、「メキシコや中国で雇用を産み出している企業を摘発するなんて、この国は狂っている。FCPAはhorrible。改正されるべきだ。FCPAのおかげでアメリカのビジネスは大きな損失(huge disadvantage)を被っている」と発言。これはまさにブレジンスキー(カーター政権時代)を思わせる発言。
  3. 国務長官に親ロシア派のティラーソン氏が就任し、ロシアとの融和策が取られる場合、ハードルは下がる=消極化する可能性(プーチン大統領もFCPAの域外適用に批判的だから)
  4. 仮にルドルフ・ジュリアーニ元NY市長が司法長官に選ばれていれば、話は別だった。ジュリアーニ氏はFCPA摘発を推進したミュケイジー元司法長官の同志ともいうべき存在。企業犯罪・不正行為に厳しい姿勢が取られFCPA積極摘発路線が維持される可能性が高かった。
  5. なお、司法省の執行自体が急に変化する訳ではない(司法省の捜査実務を担う幹部が皆、政治任用で交替する訳ではないから)。
  6. 実務的には、2015年9月の司法省「イェーツ・メモ」を受けた、新しい捜査パイロットプログラムが稼働したばかりで、捜査実務の方針は直ちには変わらないだろう。
  7. 従来通りFCPA 摘発を継続する可能性も残っている。例えば、中国対抗策として中国企業による贈賄を摘発する等、実利的な判断からFCPAの戦略的活用が図られる可能性。米国企業保護の見地から日本企業が狙い撃ちされる危険性もある。この場合、FCPA適用の「二重基準」(ダブルスタンダード)が問題視される局面も考えられる。

こんなところです。

いずれにしても、FCPAの摘発動向を考える上で、いっそう「地政学的な視点」を取り入れることが重要になっているということだと思います。

ということで、春から5年目に突入するBERC(=日本の主要企業が参加するコンプライアンスの専門機関)の「外国公務員贈賄罪研究会」は、地政学的リスクの分析に重点を置く方向で運営していきたいと思っています。なお、同研究会に参加したい企業は、BERCに入会することが必要です。詳しくはBERCにお問い合わせください。

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中国が「国家監察委員会」を新設へ

2017/1/3の朝日新聞の記事(西村大輔記者)によると、中国が公務員の腐敗行為を取り締まる国家機関「国家監察委員会」を2018年3月に新設する方針とのことです。

http://digital.asahi.com/articles/DA3S12730505.html

習近平政権はこれまでに大々的に反腐敗政策を執行し、政法委員会を牛耳って来た周永康をはじめとする政府・軍高官を摘発してきましたが、その集大成として、共産党の中央規律検査委員会や中央巡視組とは別に、常設機関として本格的な腐敗摘発組織を新設するということのようです。

西村記者によると、国家監察委は「関係部門を統合し、政府と同格の地位を与えて権限を強化。中央規律検査委は存続するが、機能や要員は国家監察委と統合する可能性が高い」とのこと。

「政府と同格の地位」というと、日本の三権分立の構図に慣れた頭には驚きかもしれませんが、中国での政府は党の下にある機関に過ぎません。

今回の国家監察委員会の常設を、「いよいよ腐敗取締りが本格化する」と捉えるか、「これでルーティン化=日常化するので、一段落だ」と捉えるか、人によって見方は分かれるかもしれませんが、在中国日本企業にとっての影響は大でしょう。

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パナソニック、調達部門における接待を大量処分

パナソニックは2016/11/1、テレビ部品の購買/調達部門等の社員らが納入元メーカーから延べ2000回以上もの接待を受けていたとして、厳しい社内処分を下したと報じられています。

産経新聞によると、処分の対象となったのは全部で「90人余り」。中心となったのは、テレビ部品の調達部署に属する70人強です。接待を受けることを禁止する社内規定に違反したとして、「約5人が降格、30人前後が出勤停止、50人前後がけん責処分」を受けたとのことです。

今回の接待が「渉外性」のある(国境を越える)便宜供与だったかは不明ですが、国内案件だとしても(ちなみに、UKBAやベトナム改正刑法(2017年施行予定)と異なり、我が国では民間同士の利益の供与はそれ自体では違法ではありません)、調達部門は特に、契約にあたって便宜供与を受ける潜在的可能性が高く、情実による判断が会社に損害を与える可能性がある部署ですので、一罰百戒的に厳しい処分を下したものと思われます。

民民贈収賄防止に取り組んでいる日本企業は多くなりましたが、実際の処分に踏み切り、かつ自主的に公表した例はあまり聞いたことがありません。パナソニックのインテグリティを示す先例として、今後評価されることでしょう。

http://www.sankei.com/west/news/161105/wst1611050030-n1.html

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