コミーFBI長官の電撃解任

5/9、FBIのコミー長官が電撃的に解任されました。ホワイトハウスの声明は、次のような内容です。

The White House
Office of the Press Secretary
For Immediate Release
May 09, 2017
Statement from the Press Secretary

Today, President Donald J. Trump informed FBI Director James Comey that he has been terminated and removed from office. President Trump acted based on the clear recommendations of both Deputy Attorney General Rod Rosenstein and Attorney General Jeff Sessions.
“The FBI is one of our Nation’s most cherished and respected institutions and today will mark a new beginning for our crown jewel of law enforcement,” said President Trump.
A search for a new permanent FBI Director will begin immediately.

https://www.whitehouse.gov/the-press-office/2017/05/09/statement-press-secretary-1

コミー長官が今回「ターミネイト」されてしまった理由ですが、現時点での報道によると、

  1. ヒラリー・クリントン候補の私用メール問題に関する大統領選挙中のコミー長官の判断は「重大な誤り」だったとするレターを、ローゼンスタイン司法副長官がセッションズ司法長官に送った。ローゼンスタイン司法副長官は、コミー長官の一連の対応は「検事や捜査官が教科書でしてはならないと教わる典型例」だと批判した。
  2. セッションズ司法長官がこれを受けて、「FBIの指導部は新鮮なスタートが必要だ」と助言するレターをトランプ大統領に送った。
  3. ヒラリー・クリントン氏が5/2、NYの集会で「私が敗北した理由は最後の10日間におきた出来事のせいだ。もし投票が10月27日だったら、私が大統領になっていた」と恨み節を漏らした。
  4. トランプ大統領が5/9、コミー長官解任に踏み切った。

という経緯が伝えられています。

http://www.jiji.com/jc/article?k=2017051000225&g=int

ローゼンスタイン司法副長官(Rod Rosenstein)といえば、トランプ大統領に解任されたサリー・イエーツ司法長官代行(兼司法副長官)の後任として、1月に指名され、4/25に議会承認が下りたばかりの人です。長いことMarylandの連邦地区検事(DA)を務めていましたが、晴れてDOJ副長官に就任して最初の大仕事が「コミーFBI長官を更迭すること」になった(なってしまった)訳です。

ちなみに、前任のイエーツ副長官は、ヒラリー寄りだったリンチ(前)司法長官が去った後、暫定的に司法長官職を代行している僅かな期間のうちに、①イスラム7カ国からの入国を一時的に制限する大統領令の合法性に疑問を呈するメールを司法省内に送付しただけでなく、②トランプ陣営幹部が選挙期間中にロシア政府関係者と接触していた証拠となる電話盗聴記録をリークしたと報じられている人物です。

我が国の官僚であれば、配置転換前に一時的なポストに就任した場合はじっとしてなにもしないのが普通でしょう。また、政治の世界でも、内閣が総辞職した後、次の内閣が成立するまでの間、行政の継続性の観点から職務を執行する「職務執行内閣」というのがありますが、この職務執行内閣では、政務三役は粛々と業務を執行するだけで新しいことはしないというのが通例だと思われます。それに比べると、サリー・イエーツ氏の戦略的な「後足で砂をかける」技は凄いものがありました。

ともあれ、ヒラリーのメール問題に対する捜査を再開させたことで、「結果として」トランプ大統領当選の立役者となったコミーFBI長官ですが、政権発足後も、トランプ陣営幹部が選挙期間中にロシア政府関係者と接触した問題(いわゆるロシアゲート)の捜査を続行し、トランプ政権の悩みの種になっていました。

「このままほっておくとコミー長官がトランプ政権の獅子身中の虫になる」と考えたのかどうか、トランプ大統領がついに長官解任に踏み切った訳ですが、ワシントンでは「司法妨害ではないか」という大きな波紋が広がっています。

ニクソン政権下のウォーターゲート事件における「土曜日の夜の虐殺」の再来だと指摘する声も出ている今回の解任劇について、ウェブサイト「法と経済のジャーナル」(AJ)に論考を連載することになりました。解任理由とされた「ヒラリー元国務長官のメール問題捜査」の検証を皮切りに、ロシアゲートから政治権力と法執行機関の関係まで、いろいろと考えて行きたいと思います。

http://judiciary.asahi.com/fukabori/2017051900003.html

 

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