FIFA事件「犯罪王リコの泣く夜は恐ろしい」

2015年5月27日、FIFA(国際サッカー連盟)の汚職事件が摘発され、DOJ(米国司法省)によってFIFAや企業関係者計14人が起訴されるとともに、スイス警察によって会議に参集していた現役のFIFA副会長2人を含む7人が逮捕されました。DOJのトップに就任したばかりのロレッタ・リンチ司法長官、衝撃のデビューです。

キーワードとなるのはRICO法(Racketeer Influenced and Corrupt Organization Act)。いわゆるアメリカ版の組織犯罪処罰法です。1931年公開のマフィア映画「犯罪王リコ」にちなんで「リコ法」と呼ばれるこの法律。サッカーを司る国際組織FIFAに適用されたというのは、確かに衝撃的です。

日本のメディアの多くが「贈収賄」や「賄賂」という見出しで報じたこともあり、「えっFIFAの役員って(外国)公務員なの?」、「FCPAが適用されたの?」といった問い合わせが殺到しましたので、簡単に整理してみます。
DOJが今回公表しているWebb et al. Indictmentをみると、訴因が47個も列挙されています。

http://www.justice.gov/opa/file/450211/download

メインとなるのは、RICO法で規定されている「組織犯罪の共謀」(Racketeering Conspiracy:ラケッティア行為の共謀)です(Title 18, United States Code, Sections 1961(1) and 1961(5))。

この「ラケッティア行為」というのがややこしいのですが、マフィア等の組織・集団が恐喝等の違法行為(=ラケッティア行為)によって不正に利益を得ている場合、その一つ一つの行為をその都度摘発するのでは(いたちごっこで)組織犯罪を十分には処罰できないので、脅迫行為等が(反復)継続 (pattern of racketeering activity)していると認められる場合は、その組織(=エンタープライズ)の運営に関与すること自体を犯罪として処罰しようというもののようです(日本の組織犯罪処罰法の母体ともいえる法律です)。

したがって、このRICO法は二段構えの構造になっており、基本犯罪としてmurder, kidnapping, gambling, arson, robbery, bribery, extortion等の犯罪がまず列挙されており、つぎにそれらの犯罪が「10年間に2個生じた」場合に、pattern of racketeering activityが認められ(他にunlawful debtもありますが)、継続的ラケッティア行為を遂行した組織の運営に関わること自体が犯罪になるというものです。

今回のFIFA事件では、訴因として、Wire Fraud Conspiracy(電信詐欺。Title 18, United States Code, Section 1343)や、Money Laundering Conspiracy(マネーロンダリング。Title 18, United States Code, Sections 1956 and 1957) 、Unlawful Procurement of Naturalization(帰化申請手続における虚偽申告。Title 18, United States Code, Sections 1425)、obstruction of justice(捜査妨害、Title 18, United States Code, Section 1512)等が挙げられていますが、これらが基礎犯罪にあたるものと思われます。

そうした犯罪が(なかには20年以上も)継続して為されていたと言えるので、FIFAの役員やスポーツ関連企業、関係者が「エンタープライズ」(組織)とみなされて、その組織の運営行為に関わった人々にRICO法が適用された(適用できた)という構図です。

組織の運営行為の中には、不正旅行罪(interstate and foreign travel in-aid-of racketeering、Title 18, United States Code, Section 1952)と並んで、贈収賄罪(bribery, New York State Penal Law Sections 180.03 and 180.08)が登場します。このNew York州刑法の贈収賄罪、実は商業賄賂を罰しています。賄賂を贈る相手が公務員でなくてもよい訳です。

つまり、今回の事件は、FCPAの事件ではありません。

なお、Wire Fraudはワイヤーを利用した「詐欺」ですが、実質的には、賄賂・キックバックをもらうことで職務を汚したということで、日本でいえば背任に近いものと思われます。また実務的には、「所得の虚偽申告」(Aiding and Assisting in the Preparation of False and Fraudulent Tax Returns、Title 26, United States Code, Section 7206(2)等)という税法上の犯罪が訴因として挙げられている点も見逃せません。

過去の国際サッカー大会の関係者、スポンサード契約を締結した企業の担当者だけでなく、2020年の東京オリンピックに向けて各種の準備行為を営んでいる方にとっても、ただ事ではない今回のFIFA事件、引き続き注視していきたいと思います(次回のBERC外国公務員贈賄罪研究会で集中的に取り上げる予定です)。

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フジクラの中国子会社が「非公務員に対する贈賄罪」で起訴

時事通信が本日(2014年10月27日)、「フジクラの中国における連結子会社が非公務員に対する贈賄の疑いで、同国の地方検察当局から8月に起訴された。他に同社の中国人営業幹部が贈収賄の疑いで、外部の民間コンサルタント会社の中国人社員が収賄の疑いで起訴された」旨を報じています。
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2014102700758

株式会社フジクラの公式サイトには、以下のような内容のプレスリリースが公表されています。
http://www.fujikura.co.jp/newsrelease/__icsFiles/afieldfile/2014/10/27/newsrelease20141027.pdf

  • 中国の子会社「珠海藤倉電装有限公司」(FZL社)は、フジクラが49%、フジクラ電装が51%を出資する連結子会社である。
  • そのFZL社の中国人営業幹部を、2014年3月以降、中国の地方検察当局が「贈収賄」の嫌疑で調査した。FZL社も関係書類を押収された。
  • 2014年8月18日、中国人営業幹部と他の個人、及びFZL社が「非公務員に対する贈収賄」の嫌疑で起訴された。近日中に第1回の裁判が行われる予定
  • FZL社は、このような嫌疑を受けたことを重く受け止め、既に内部監査機能の強化、法令遵守の教育等を実施しており、再発防止に務める。
  • 事実関係の確認は裁判での開示を待たざるを得ない状況。判決等による一定の結論に至った場合は改めて情報開示を行う。

このプレスリリースによると、FZL社が営業幹部等とともに「贈収賄」で起訴されたという表現なので、贈賄側と収賄側の双方を兼ねているようにも読めます。

しかし、時事通信の報道によれば、贈賄と収賄双方の疑いをかけられているのは営業幹部だけで、FZL社自体は「組織体」(≒法人)による「非公務員に対する贈賄」(つまり、刑法164条1項)、外部の民間コンサルタント会社の中国人社員が「収賄」(おそらく非公務員による収賄罪(刑法163条)でしょうか)の被疑事実で起訴されたということのようです。事実関係の確認が裁判での開示を待たざるを得ないという状況とのことですが、内部監査、内部統制の限界を吐露した正直なプレスリリースだと思われます。

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JTC事件、元社長ら3名が外国公務員贈賄罪でついに起訴

本日、外国公務員贈賄罪の疑いで東京地検特捜部は、日本交通技術(JTC)の前社長(6/30付で引責辞任済み)、元常務(元国際部長)、元経理担当役員の3人を在宅起訴し、法人としてのJTCも起訴されたと各社が報道しています。起訴されたのは、ベトナムでの「ハノイ市都市鉄道建設事業」をめぐる計6990万円の贈賄ということです。
JTCは7/10付けで「起訴に関するお知らせ」という短いプレスリリースを発表しています。
http://www.jtc-con.co.jp/oshirase.pdf

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インドネシア火力発電所事件、丸紅が役員を処分

丸紅は5/16、インドネシアのタラハン火力発電所に関わる外国公務員贈賄事件について新たなプレスリリースを公表しました。
http://www.marubeni.co.jp/news/2014/release/data/indonesia.pdf

それによりますと、

  • コネチカット州連邦地裁が5/15、アメリカ司法省(DOJ)との間の司法取引契約を承認し、丸紅に対して8800万ドル(約91億円)の支払いを命ずる判決を出した。
  • 丸紅としてはコンプライアンス体制の更なる強化のために5/26付けで「コンプライアンス統括部」を新設し、再発防止に務める。
  • 社長の月額報酬 50%を6 ヶ月間、会長及び代表取締役の額報酬 30%を6 ヶ月間、執行役員の月額報酬 10~30%を1~3 ヶ月間、減給する。
  • 事件に関係した社員に対して、社内規程に従い厳正な処分を実施する。

とのことです。

ナイジェリア事件の記憶もまだ新しい中で発覚した今回の事件、世間では「またか」と感じる人が多いのではないかと思われます。そうした状況の中での再発防止策または危機管理対策として今回の丸紅の対応が適切と言えるか、来週のBERC外国公務員贈賄罪研究会で検討したいと思います。

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JTC事件でベトナム国鉄副総裁らが逮捕

朝日新聞5/7夕刊によると、JTCによるベトナムでの外国公務員贈賄事件に関して、ベトナム国鉄のチャン・クオック・ドン副総裁ら幹部4人が背任等の容疑で逮捕されたとのことです。
一連の報道によると、「ハノイ市都市鉄道建設事業」に関係していたチャン・クオック・ドン副総裁(当時、鉄道プロジェクト管理部門責任者)と管理部門のファム・クアン・ズイ次長、ファム・ハイ・バン次長ら4人は「背任」または「公権力濫用」の疑いで逮捕されたようです。共同通信によると、他に、鉄道庁のチャン・バン・ルック鉄道プロジェクト管理部長も無期限停職になったとのことです。

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JTC(日本交通技術)事件の第三者委員会報告書

ベトナム、インドネシア、ウズベキスタンにおける外国公務員に対する贈賄疑惑について、日本交通技術株式会社(JTC)が設置した第三者委員会による報告書が4/25付けで公開されています。
http://www.jtc-con.co.jp/taio2.pdf

報告書の内容については、BERCで開講されている外国公務員贈賄罪研究会で先日、細部まで検討しましたが、ここまで詳細に外国公務員に対する贈賄の事実を認定した日本語による文書が公開されたケースはかつてなかったと思います。この報告書は外国公務員贈賄罪に関心のある企業のリスクマネジメント/危機管理担当者のみならず、アジア関連の海外事業に携わっている方にとっても必読ではないでしょうか。
今後、ODA関連事業に関する外国公務員贈賄防止策をどう改善していくのかという議論が国会でも行われると予想されています。特にベトナムについてはPCI事件の教訓がほとんど活かされていないことから、ODA業務の運営そのものにビルトインさせた形での防止策を構築すべきかどうかという点についても検討していかなければならないと考えられます。

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日本交通技術ベトナム等外国公務員贈賄疑惑の報道

日本経済新聞によると、日本交通技術株式会社に、ベトナム等での鉄道関連プロジェクトに絡む外国公務員への利益提供疑惑が浮上したとのことです。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2000Y_Q4A320C1CR0000/

日経の記事のポイントは、以下の通り。

  • 鉄道・道路を中心としたインフラ整備の設計を手掛けているJR東日本とJR東海系列のコンサル企業「日本交通技術」が約1億円の支出について東京国税局の税務調査に使途を明かさず、制裁課税を受けていたことが20日、関係者への取材で判明した。
  • この支出はODAに絡んで外国公務員に支払ったリベートの可能性があり、不正競争防止法違反(外国公務員への贈賄)の疑いが出ている。
  • 同社は約1億円の支出をいったん「仮払金」として計上し、その後、手数料などとして処理。東京国税局に「使途秘匿金」と認定され、法人税に重加算税と制裁課税を加えた約9千万円を課税された。同社は既に修正申告したとみられる。

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これに対して、日本交通技術株式会社は3/20付けでプレスリリースを発表しています。その内容は次のようなものです。

  • 一部報道によりODA(円借款)に伴う海外事業において、海外公務員に対する利益供与が行われた疑義が生じている。
  • 捜査機関(東京地検特捜部)に対して、すでに3月18日付で本件に関する情報の提供を申し出た。
  • 本件に関する事実関係の調査、原因分析及び再発防止策の提言を委託する第三者委員会を3月20 日付で設置した(委員長 國廣 正 (弁護士・国広総合法律事務所)、委員 竹内朗(弁護士・プロアクト法律事務所)、委員 西垣建剛(弁護士・ベーカー&マッケンジー法律事務所外国法共同事業) )。
  • 今後の対応としては、今後、捜査機関及び第三者委員会による調査に対して全面的に協力していく。第三者委員会による調査の結果明らかになった事実関係については、速やかに開示を行い、その提言については真摯に検討していく。

出典:日本交通技術株式会社公式サイト プレスリリース「一部報道についての当社の今後の対応について 」

http://jtc-con.co.jp/taio.pdf

報道と同タイミングでの第三者委員会の設置、入念な準備があったことを伺わせる対応だと思います。

JTC_press

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丸紅スマトラ島火力発電所事件 3/20付けプレスリリース

丸紅の3/20付けプレスリリースです。要約すると、以下のような内容です。

  • 丸紅は、インドネシア・スマトラ島ランプン近郊タラハン地区における「インドネシア国有電力会社」(PT. PLN(Persero) の火力発電所ボイラー案件について、フランス企業の米国子会社及びインドネシア子会社とコンソーシアムを組成し、2004 年 7 月に案件を受注した(本案件は 2007 年に完工)。
  • このコンソーシアムが起用した代理店が、インドネシアの公務員に対して不正な支払いを行った疑いがあるとして、FCPA 違反の疑いで、丸紅及びコンソーシアムパートナーその他関係者に対する調査が行われた。
  • 3 月 19 日、インドネシア・タラハン火力発電所向ボイラー案件に関して、DOJとの間で司法取引に合意し、8800万ドル(約 91 億円)を支払うことにした。裁判所による判決は 5 月 15 日の予定。
  • 丸紅は、ナイジェリアLNG プロジェクトに関して、FCPA 違反の嫌疑により、2012 年 1 月に米国司法省と起訴猶予契約を締結し、独立コンプライアンスコンサルタントを起用のうえ、コンプライアンス体制の見直しと改善を進めてきた結果、改善状況 について当社が提出した報告について、DOJは、丸紅が当該契約において要求されて いる水準に十分に見合う反贈収賄コンプライアンス体制を構築しているとして、2014年 1 月、 全ての手続が終了。
  • 今回のタラハン火力発電所プロジェクトは上記 2012 年 1 月の起訴猶予契約を締結する以前の過去事案。丸紅は、反贈収賄コンプライアンス体制強化に努めた結果、現在は強固かつ効果的な体制を備えていると考えている。
  • 今回の司法取引によって、更にコンプライアンスコンサルタントを起用することは要求されていないが、丸紅は、このような事態に至ったことを真摯に受け止め、今後も引続き反贈収賄コンプライアンス体制の徹底と向上を図っていく。
  • なお、2014 年 3 月期連結業績予想(親会社の所有者に帰属する当期利益 2,100 億円)に変更はない。

出典:丸紅株式会社 公式サイト プレスリリース「インドネシア火力発電所向ボイラー案件に関する米国司法省との合意について」
http://www.marubeni.co.jp/news/2014/release/JP20140320.pdf

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対応の早さ、ナイジェリア事件について隠さずに言及している点は、高い評価を得られると思います。

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インドネシア電力事業で丸紅がFCPA違反のplea of guilty

ロイターによると、3/19、丸紅がインドネシアでの電力ビジネスに関してインドネシアの公務員に賄賂を提供していたとして、司法省との間で8800万ドルの支払いに合意したとのことです。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYEA2J01P20140320

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アメリカ司法省のプレスリリース
http://www.justice.gov/opa/pr/2014/March/14-crm-290.html

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FBIのプレスリリース
http://www.fbi.gov/washingtondc/press-releases/2014/marubeni-corporation-agrees-to-plead-guilty-to-foreign-bribery-charges-and-to-pay-an-88-million-fine

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住友商事インドネシア事件に続く、インドネシアの案件として注目です。

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米系金融機関のSWF接待とFCPA

ブルームバーグは2/4、ゴールドマン・サックス等の金融機関がリビア等の政府系ファンド(SWF)からの投資を獲得するために、SWFの従業員にリベートを支払ったり豪華な物を贈ったりしたとして、外国公務員贈賄罪(FCPA)違反の嫌疑でSECの捜査を受けていると報じています。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N0G3546JTSFR01.html

日本でも最近、大手商社の厚生年金基金の運用担当幹部が、証券会社から高額接待を受けていたとして収賄罪で逮捕されています。厚生年金保険法121条は「基金の役員及び基金に使用され、その事務に従事する者は、刑法 (明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。」と規定しており、年金基金の従業員(民間人)であっても、賄賂といえるような高額の接待を受けたら、「みなし公務員」として収賄罪に問われてしまいます。
今回のSEC捜査は、金融機関による「運用契約の獲得競争における腐敗」が直接のターゲットのようですが、政府系ファンドの関係者がFCPA上の「外国公務員」と見なされ得るというのが今回の報道のポイントではないでしょうか。

BLOOMBERGscreenshot1

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LOSTの喪失感

「ロスト」(LOST)を遂に見終わりました。LOSTは、2004年9月から2010年5月までアメリカABCで放映されていた連続TVドラマで、シーズン1から6まで全部で121話もある長大なお話です(日本ではCSチャンネルAXNで2010年夏まで放送されていました)。

話の大筋は、太平洋の無人島に墜落した飛行機「オーシャニック815便」の生存者たちが生き残ろうと頑張っていると、実は島は「無人島」ではなく・・・といったものです。摩訶不思議な現象が相次ぐストーリー展開と多彩な登場人物の来歴フラッシュバックの織り込みが、とても面白いドラマでした。

(以下、ネタばれ)

最終話のラスト10秒で、墜落事故の犠牲者のスニーカーが樹にひっかかっているシーンと飛行機が墜落した浜辺のシーンが出てきます。
このラストシーンの受け止め方、「えっ、この話は全部、死後の世界の話だったのか」というものと、「いやいや、墜落当初は生きていたが、途中の事故(水爆の爆発など)で登場人物は死んだんだ」というものに分かれているようですが、私は前者でした。

死後の世界と言えば、煉獄(れんごく)です。
煉獄とは、ダンテ『神曲』の煉獄篇が有名ですが、天国に導かれる前に魂が浄化される世界のこと。カソリックの考え方ですが、日本ではなかなか馴染みがない概念ですね(ちょうど「悟性」という概念も同じように日本では一般化しないのと同じでしょうか)。このLOSTが煉獄を描いていたとすれば、現世とあの世の中間領域を描いた作品として一級品であると言えると思います。思わず愕然となるラストでした。

LOSTの登場人物は魅力的な人物揃いでしたが、なかでもソーヤ(ジョシュ・ホロウェイ)という元詐欺師が随所で繰り出す発言(時には「蠅の王」に言及も)がこのドラマの魅力を倍増させていたように思います。

長期間に渡るLOSTの視聴が終わり、一種の喪失感に包まれる秋でした。

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外国公務員贈賄罪の「適用」は何件目?

朝日新聞の夕刊(2013/09/11)ですが、この事件について、「外国公務員への贈賄罪が同法改正(1998年)で設けられて以降、贈賄罪の適用は4件目。中国が舞台となった事件は初めて。」と報じています(13面)。

ちなみに、外国公務員贈賄罪の「適用」という言葉が「逮捕または起訴」を意味するとした場合は、

  • 2007年の九電工事件
  • 2008年のPCI事件(東京地裁の判決確定は2009年)

に続く「3件目」になります。

これに対して「適用」という言葉をより広く捉えて、「捜査」(捜査機関が外国公務員贈賄罪の被疑事実について捜査を開始したと「報道」された場合)をも含むとした場合は、

  • 2002年の三井物産モンゴル事件
  • 2011年の住友商事インドネシア事件

をいれて「5件目」ということになります。

なお、外国公務員に対する贈賄という点で有名な

  • 2001年の三井物産中国事件

を考慮に入れるとすれば、中国が舞台となった「事件」は「初めて」とは言えないでしょう(ただし三井物産中国事件は少なくとも報道ベースでは捜査されておりませんし、立件もされておりません)。

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外国公務員贈賄罪で日本企業元役員が逮捕

共同通信・朝日新聞(夕刊)・産経ニュース等によると、本日(2013/09/11)自動車マフラー最大手「フタバ産業」の元専務が愛知県警に外国公務員贈賄罪の疑いで逮捕されたとのことです。
http://www.asahi.com/national/update/0911/NGY201309110007.html?ref=com_top6_2nd
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130911/crm13091117000014-n1.htm

産経ニュースによると、

  • 中国での事業をめぐり同国広東省にある自治体幹部に現金を渡したとして、愛知県警捜査2課が不正競争防止法違反(外国公務員への贈賄)の疑いで、フタバ産業(愛知県岡崎市)の元専務T氏を逮捕した。
  • 元専務T氏は2003年6月から2009年5月まで中国における事務機器事業を担当する取締役だった。
  • 逮捕容疑は2007年(平成19年)12月中旬頃に中国広東省の自治体幹部に数万香港ドル等を渡したというもの。
  • 金銭等の授受は、中国税関当局の検査で同社工場の違法操業が発覚した際に、黙認・もみ消しを求めるためだった。

    とのことです。
    朝日新聞によると、元専務は不正融資の会計処理をめぐって文書偽造で愛知県警に逮捕されていたとのことです。

外国公務員贈賄罪(不正競争防止法18条1項)の時効は5年。しかし、海外にいる間、時効の進行は停止するのが盲点です。
中国ではこのところ外資系製薬企業に対する中国刑法上の贈収賄事件が相次いで摘発されていますが、同じ中国ビジネスにからんで日本企業が日本の警察によって摘発されるという事態に衝撃を受けた方が多いと思います。

引き続き事件の推移を注視して参りたいと思います。

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航空機向け機内エンターテインメントシステムに関わるWSJの報道

3/31、The Wall Street Journal電子版が「航空機向け機内エンターテインメントシステム」を手がける日本企業米国子会社に関わる「FCPA関係の調査」についての記事を突如、掲載しました。

このWSJの記事掲載をきっかけに、日本でも共同通信、時事通信、朝日、日経等のマスコミ各社が昨日から今日にかけていっせいに同案件を報じています。しかし、後追いの記事はいずれもWSJの記事内容を紹介しているものが大半で新情報には乏しく、なかには「あれっ」と首を傾げるものも。

いずれにしても、ひとつ言えることは、外国公務員贈賄に関する案件は(特に米系)メディアにとっては「ホットイシュー」であり、対応ひとつで思わぬダメージを被ってしまいかねないレピュテーションリスクがあるということでしょうか。引き続き事態の推移を注視していきたいと思います。

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「ブラジル・ロシア・インドにおける外国公務員贈賄罪」(ビジネス法務2013年3月号)

『ビジネス法務』2013年3月号(中央経済社)に「ブラジル・ロシア・インドにおける外国公務員贈賄罪」という論文を掲載して頂きました。これは、中国を除くBRICs諸国の外国公務員贈賄罪(法案)について基礎知識を整理したものです(なお、本論文における意見にわたる部分は筆者の個人的な見解です)。

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UE社フィリピンカジノ事件続報 土地取得の外資規制(朝日新聞)

今朝の朝日新聞(2012年12月31日)朝刊(3頁)は「UE社がカジノ用地を違法取得」したと報じています。昨日の関連記事です。
朝日新聞の記事によると、

  • UE社は、フィリピン現地法人「イーグルIランドホールディングズ(イーグルI社)を通して、マニラのカジノ用地を買収した。
  • フィリピン司法省はこの土地買収が違法であるとして、カジノ営業を認めないように娯楽賭博公社に対して勧告した。
  • フィリピン国会公聴会も違法な土地取得を重くみて、カジノ免許付与を巡って紛糾している。
  • フィリピンでは株式の60%以上をフィリピン国民が保有していない企業の土地取得は認められていない。
  • イーグルI社の株主構成は、4割がUE社の米国法人「アルゼUSA」、6割がフィリピン法人であるが、フィリピン法人の株式の4割はアルゼUSAが保有していた。
  • つまり、アルゼUSAはイーグルI社の株式を直接・間接的に計64%保有していることになる。
  • よって、イーグルI社による土地取得は土地取得に関する規制に違反しており、違法である。
  • UE社は12月12日にフィリピン地場大手企業と提携して株式を譲渡する計画を発表したが、違法状態の解消を目指すためとみられる。
  • UE社は朝日新聞の取材に対して「違法との認識はないが、法令順守体制の強化に取り組む」と答えた。

とのことです。
この朝日新聞の記事が仮に真実であるとした場合、カジノ用地取得がフィリピン国内法上の土地取得の外資規制に違反していたということになります。

しかし、昨日のFCPA違反疑惑の報道も含めて、UE社から朝日新聞の記事掲載に対するコメントは現時点で公表されておりません。上場企業の社会的責任という見地からは、同時に、企業防衛の観点からしても(年末年始という時期だからこそ)迅速な対応が望まれているのではないでしょうか。

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ユニバーサルエンターテインメント社のフィリピンカジノ事業に関する報道(朝日新聞)

今朝の朝日新聞(2012年12月30日)朝刊は1面トップで、日本のパチスロ遊技機メーカー「ユニバーサルエンターテインメント社(UE社)がフィリピンで計画しているカジノリゾート事業に関係してフィリピン政府高官らに接待が繰り返され、FCPA違反の疑いでFBIが捜査を始めた」と報じています。

朝日新聞の記事によれば、

  • UE社は、フィリピンにおけるカジノ営業の暫定免許を受け、現在は正式免許の認可待ちだった。
  • UE社の接待は、UE社と現在は敵対関係にあるアメリカのウィン・リゾーツ社の調査報告書によって発覚した。
  • ウィン社報告書によると、UE社は2008〜2011年にかけて、ラスベガス・マカオにあるウィン社のカジノホテルで、フィリピン娯楽賭博公社の総裁・部長らの宿泊費や遊興費を支払った。
  • 接待費は11万ドル(約946万円)にのぼった。
  • フィリピン娯楽賭博公社の総裁と部長は朝日新聞の取材に対して、接待を受けた事実を認めた。
  • ウィン社報告書は、米国に子会社があるUE社の接待は、FCPAに違反する可能性が高いという。
  • FBIが捜査を開始し、複数の関係者がFBIから既に事情を聴かれた。
  • 接待問題とは別に、UE社側がフィリピン娯楽賭博公社顧問だった人物に1,500万ドル以上の巨額送金をしていたことが判明し、フィリピン国会が公聴会を断続的に開いている。
  • UE社会長も年明けの公聴会に呼ばれる予定である。
  • UE社は接待を担当した元同社幹部社員らを相手に、損害賠償を求める民事訴訟を3件、東京地裁に提訴している。
  • まず、UE社米国法人の元支社長らに対する訴訟では、同社の香港関連会社を通じて1,000万ドル(約8億6千万円)がフィリピン娯楽賭博公社顧問が経営する英領バージン諸島の会社に送金されたことが争われている。
  • 次に、UE社米国法人の元支社長に対する訴訟では、コンサルタント料の名目で500万ドルが海外に不正送金されたことが争われている。朝日新聞が入手したUE社内部資料によれば、送金された日付はUE社の香港関連会社あてに資金が流された日と一致し、翌日にはフィリピン娯楽賭博公社顧問が経営する香港の会社に同額が送金されているという。
  • 最後に、接待を担当したUE社の元執行役員に対する訴訟では、ウィン・リゾーツ社の前身企業に出資した9千万ドルが使途不明になっていることが争われている。

とのことです。

この朝日新聞の報道内容が仮に真実であるとした場合、次のようなことが言えると考えられます。

まず、本件は、我が国の不正競争防止法18条1項が規定している「外国公務員贈賄罪」が適用される可能性があります。この点について朝日新聞の記事は言及していませんが、本件はむしろ我が国の外交公務員贈賄罪の典型ケースとも言える内容となっています。例えば、フィリピン政府高官が接待の相手方という点は、日本における最初の外国公務員贈賄罪有罪事件である「九電工事件」と同一です。また、ビジネスパートナーまたは密接利害関係人との間での「内紛」が事件化の一つの契機であるという点は、2番目の有罪事件である「PCI事件」と類似した構図になっています。便宜供与(接待)の担当者が日本人である以上、接待地が外国であっても、属人主義(刑法3条)に基づいて日本の外国公務員贈賄罪が適用される(可能性がある)という点もPCI事件と同じです。後は、時効の点と、フィリピン娯楽賭博公社の「顧問」が外国公務員にあたると言えるかといった点が問題となるでしょう。

次に、九電工・PCI事件と大きく異なるのは、FBIが捜査に乗り出しており、アメリカのFCPA(連邦海外腐敗行為防止法)の適用可能性があるという点です。事件の端緒となったウィン・リゾーツ社の調査報告書はFBI長官を務めた大物ルイス・J・フリー氏が率いるファームによって作成されているとのこと。FCPAで摘発された場合、日本の外国公務員贈賄罪との重畳適用という問題が発生するでしょう。

また、フィリピン議会の公聴会で本件が取り上げられ関係者が聴取されているという点は、インドネシアでの鉄道事業に関して同国の刑事裁判で接待相手が審理を受けていた住友商事の案件と類似性があります。住友商事事件は不起訴処分を勝ち取りましたが、本件はどうなるでしょうか。引き続き事件の推移を注視していきたいと思います。

いずれにしても、日米のエンターテインメント関係企業間でカジノビジネスを巡って紛争が生じており、その過程でFCPAまたは不正競争防止法の外国公務員贈賄罪の疑惑が報じられるに至ったということだと考えられます。

UE社は既に、ウィン・リゾーツ社会長のウィン氏を名誉毀損でフィリピン検察に告訴したり、一連の「疑惑」を報道したロイターを名誉・信用毀損で訴えたりしていますが、本日の朝日新聞記事についてはまだ正式なコメントを出していないようです。迅速かつ適切なメディア対応も含めて、UE社としては、外国公務員贈賄罪に特有のリスク対策を取ることが喫緊の課題になったと言えるでしょう。

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ビジネス法務9月号「中国における外国公務員贈賄罪の新設」

7月21日発売の『ビジネス法務』2012年9月号(中央経済社)に「中国における外国公務員贈賄罪の新設」という論文を掲載して頂きました。
中国は昨年2011年、刑法を改正して「外国公務員贈賄罪」を新設しました。このことは米国FCPAに端を発する「外国公務員に対する贈賄を違法化する」という立法政策のトレンドが遂に中国へ到達したことを意味します。

そこで、その中国版外国公務員贈賄罪の内容と意義について、国際潮流の中に位置づけながら分析を加えたのがこの論文です(なお、本論文における意見にわたる部分は筆者の個人的な見解です)。ありがとうございました。

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住友商事インドネシア事業の外国公務員贈賄疑惑、不起訴処分に。

住友商事のインドネシア鉄道事業に関する外国公務員贈賄疑惑ですが、東京地検が「不起訴処分」にしていたと朝日新聞が報じています(朝日新聞2012年7月3日朝刊38頁)。それによりますと、

  • 住友商事の社員2人がインドネシア運輸省幹部を日本に招いて数十万円相当のゴルフ・飲食接待を行った。
  • そこで、警視庁が外国公務員贈賄罪の被疑事実で捜査し、東京地検に書類送検した。
  • しかし、東京地検は6月、不起訴処分にした。

ということです。

毎日新聞によると、「接待額が少額なことなどから、賄賂と認定するのは困難と判断したとみられる」とのこと。

http://mainichi.jp/select/news/20120703k0000m040117000c.html

つまり、外国公務員贈賄罪について「嫌疑不十分」ということで不起訴という結論になったようです。

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ビジネス法務10月号「中国における贈収賄罪の構造と日本企業のリスク対策」

『ビジネス法務』2012年10月号(中央経済社)に「中国における贈収賄罪の構造と日本企業のリスク対策」という論文を掲載して頂きました。

これは、中国の「国内贈収賄」について分析した論文で、中国の外国公務員贈賄罪を理解する前提として国内賄賂犯の基礎知識を整理したものです。

中国の国内贈収賄は、刑法と反不正競争法によって規律されていますが、日本法とは異なる意味で「法人犯罪」が認められていることや、私人間の贈収賄(民民賄賂)も広範に規制されていることもあって、整理がなかなか容易ではない分野だと思います。

そこで、そうした中国の国内贈収賄について、日本企業にとってのリスク対策をどう考えればよいかという観点から、分析を加えてみました。執筆にあたっては中国に進出している日系企業の法務担当者・リスク担当者の方々から貴重な体験談をお聞かせいただきました(なお、本論文における意見にわたる部分は筆者の個人的な見解です)。ありがとうございました。

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