FCPA摘発と共和党/民主党

FCPAの摘発動向についてですが、「民主党政権は積極的だったが、共和党政権は消極的になるのでは!?」という意見も頂きましたので、追加でコメントします。

下のグラフを見てもらうと一目瞭然ですが、政権が民主党(青)か共和党(赤)かという問題とFCPAの摘発動向は、直接的な関係はありません(なお、グラフの件数はDOJの執行分のみで、会計条項違反のみの案件が含まれるSEC執行分は含んでおりません)。

アメリカの司法省(DOJ)や証券取引委員会(SEC)は、アメリカ国内で「会合」を開いたり、米国銀行の口座を経由して「送金」したり、アメリカ人やアメリカ企業(ニューヨーク証券取引所等で上場している日本企業含む)と「共謀」をしたりしているといった事由をとらえてアメリカ連邦法の管轄権を主張し、FCPAの「域外適用」を押し進めてきましたが、摘発が激化したのは2007年頃からです。

今に至るその流れの先陣を切ったのは、ブッシュ(息子)政権(共和党)で司法長官に任命されたマイケル・ミュケイジー氏でした。続くオバマ政権(民主党)で任命されたエリック・ホルダー氏(史上初の黒人司法長官)もこの路線を受け継ぎ、2012年のガイドライン作成・公表の前後にいったん摘発が沈静化した時期を例外として、FCPAの域外適用による摘発件数は高止まりしたままです。共和党から民主党への政権移行の影響は伺えません。ここ1〜2年は、リンチ司法長官(黒人女性として初めて司法長官に任命)がFCAやRICOを使った「民間同士の利益供与」案件の摘発を積極的に進めたので、FCPAそのものを適用する案件の件数は若干減っていますが、ビジネス贈収賄の摘発状況は消極化している訳ではありません。

逆に、ミュケイジー以前の時代は、FCPAの摘発件数は低いままに推移していました。特にレーガン政権(共和党)は、反共の旗を掲げていればある程度の腐敗は黙認するという政策で、いわゆる開発独裁政権(developmental dictatorship)のやりたい放題を見過ごしていたとも言えますので(ただし中南米のドラッグ関係は別)、外国公務員(外国政府高官)に対する賄賂は黙認される傾向があったと言えます。

いずれにせよ、FCPAの摘発動向と、政権が民主党か共和党かは、直接の関係はないということが分かります。トランプが大統領に就任した今後、FCPAの摘発がどうなるかは、トランプ大統領自身の考えと、トランプ政権としての通商政策の具体策、そして(摘発鈍化を促す米系企業による)ロビー活動の成否による、というのが本当のところでしょう。

ちなみに、2007年頃に始まり現在まで続くこの潮流がなぜ始まったのかは、別の大きな問題です。その「因果関係」を明確に摘示することは難しいのですが、一言で言うと、2001年の「9.11テロ」後、主にFATF等の金融分野で構築されていったテロ資金対策の政策が背景にあること、そして海外贈賄に関する証拠収集(電子メール・SNS、送金・入出国に関する電子記録等)が以前と比較して相当に容易化し、かつ国際捜査共助が進展してきたことが指摘できると思います。

その意味では、トランプ政権でFCPA摘発が一時的に鈍化する可能性はあるとしても、アメリカを震源地としてここ10年ほど世界のグローバル企業を震撼させてきた贈収賄の摘発動向(国際潮流)は長期的には変わらないと言えるかもしれません。

短期的に怖いのは、中国企業と並んで、日本企業が「狙い撃ち」されることです。いち早く備えを強化している企業もありますが、ぼんやりしている所も多いのが実情です。贈収賄にかかわるリスクマネジメントの再点検は喫緊の課題でしょう。

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