2018年の腐敗防止、司法取引と中国の改正不正競争防止法施行

2018年(平成30年)になりました。明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い申し上げます。

昨年2017年は、FCPA制定40周年、OECD外国公務員贈賄防止条約締結20週年という記念すべき年でしたが、残念ながら、ロールスロイス事件やテリア事件といったFCPA巨額罰金事件の摘発が相次ぎ、オデブレヒト事件も引き続き中南米の政界を揺さぶっています。草葉の陰でFCPAの父プロクシマイヤー氏も悲しんでいることでしょう。

しかし、OECDが2017/12/12に開催した記念シンポジウムでも語られたように、外国公務員贈賄罪を中心とする腐敗をいかに防止するかという取り組みは今後もいっそう強化されていき、その流れは止まらないものと思われます。

そこで、腐敗防止という観点から、2018年に注目すべき点を幾つか列挙したいと思います。

まず日本では何と言っても、贈収賄罪にかかわる「司法取引」が導入される点です。これは、2016/5/24に第190回国会で成立した「刑事訴訟法改正案」(第189回国会閣法第42号)によって導入された刑事司法制度ですが、いよいよ運用が開始されます(2016/6/3に公布された改正法(法律第54号)の当該箇所は3年以内に「施行」されることになっています)。内容的なポイントは以下の通りです。

  1. 組織的犯罪・経済犯罪の「上位者・背後者」を解明するため、「合意制度」が新設される(改正刑訴法350条の2~28等)。
  2. 被疑者・被告人が、他人の刑事事件について、①取調・証人尋問における真実の供述、②証拠提出その他の協力をすることを検察官と「合意」した場合、検察官は、①不起訴、②公訴取消、③特定訴因・罰条での公訴提起、④即決裁判申立て、⑤略式命令請求することが出来る。
  3. 司法取引の対象となる「他人の刑事事件」は、贈収賄/詐欺/背任/恐喝/横領/ 文書偽造/公正証書原本不実記載/偽造公文書行使や、租税法/金融商品取引法/独禁法/財政経済犯罪/薬物犯等という組織的犯罪・経済犯罪に限定される(「特定犯罪」)。
  4. 弁護人の同意が必要、合意内容書面の取調べ請求義務があり、虚偽供述・偽造証拠提出は5年以下の懲役が科せられる。

といったものです。つまり、アメリカで一般的な自己負罪型ではなく、「捜査・公判協力型」の司法取引であり、かつ、外国公務員贈賄罪(不正競争防止法)は対象ではないが、刑法上の「贈収賄罪」(いわば内国公務員贈(収)賄罪)が対象となるというものです。

企業コンプライアンスとしては独禁法との関連が最重要領域となるでしょうが、贈収賄を中心とする腐敗防止の観点からは、日本でも司法取引が導入されることの意義はとても大きいものになると考えられます。特に内部通報制度の運用や「社内リニエンシー」制度の構築にあたっては、将来的に司法取引制度に乗ることの可能性を考慮した再設計が必要となるでしょう。

次に、中国の不正競争防止法が改正され、2018/1/1から施行される点です。これは、2017年11月4日に第12期全国人民代表大会常務委員会第30回会議で可決、公布された法改正によって、商業賄賂(民民贈収賄)の行政法的規制が強化されるといものです。詳細は12月のBERC外国公務員贈賄罪研究会で検討しましたが、ポイントは、取引に「影響力を及ぼす個人」をどう把握していくかという点です。内容を見てみましょう。

第7条  経営者は、金品その他の手段を用いて次の各号に掲げる企業・組織や個人に贈賄して、取引の機会や競争における優位の獲得を図ってはならない。

(1)取引相手の従業員
(2)取引相手からの委託を受けて関連事務を行う企業・組織または個人
(3)職権または影響力を利用して取引に影響を及ぼす企業・組織または個人

経営者は、取引活動において、明示の方法をもって取引相手に支払いの割引を与えるか、仲介人に対して手数料を支払うことができる。経営者は、取引相手に支払いの割引を与えるか、仲介人に対して手数料を支払う場合には、真実のとおり記帳するものとする。割引または手数料を収受した経営者は、真実のとおり記帳しなければならない。

経営者の従業員が贈賄した場合は、それを経営者の行為と認定する。ただし、経営者が証拠をもって、当該従業員の行為は、経営者のために商機または競争上の優位を獲得することと無関係であることを証明した場合は、この限りでない。

第19条  経営者が本法第7条の規定に違反して他人への贈賄を行った場合、監督監査機関は違法所得を没収し、10万元以上300万元以下の罰金を科す。事案が重大である場合は、営業許可証を取り消す。

出典:JETRO北京事務所「不正競争防止法新旧法対照表」(2017.11)

この該当条文のうち、下線を引いた「職権または影響力を利用して取引に影響を及ぼす企業・組織または個人」という贈賄対象者の第三類型が、問題です。

「取引先の従業員」や「業務委託を受けている会社・個人」ならば、(ある程度)客観的に把握することが可能ですが、「影響力を及ぼす個人」となると、その外延は甚だ不明確になります。取引先社長(総経理)の配偶者なのか、子弟なのか。中国ビジネスで不正競争防止法を遵守するために、いったいどの程度までコストをかけて取引先DDをすれば良いのか、今後の中国ビジネスにおける焦点になりそうです。

最後に、国連グローバル・コンパクトが第10原則で謳っている「腐敗防止」について、東京を舞台として新しい動きがありそうです。腐敗防止強化の動きは世界中で様々なレベルで展開されていますが、その一つの動きとして、要注目です。

BERCの外国公務員贈賄罪研究会では引き続き、FCPAやUKBAといった外国公務員贈賄罪を筆頭に、世界の腐敗防止制度の研究を深めていくとともに、日々刻々と変わっていく地政学的リスクの分析を進めていきたいと思います。

 

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