サウジアラビアの最高委員会(supreme committee)

11月4日にサウジアラビアで始まった大規模な腐敗摘発ですが、粛清の端緒は、摘発直前にサルマン国王が発表した以下の内容の勅令でした。

第一に、皇太子をトップとする「最高委員会」(supreme committee)を創設する。メンバーは、監視捜査委員会委員長(Chairman of the Monitoring and Investigation Commission)と国家腐敗防止委員会委員長(Chairman of the National Anti-Corruption Authority)、監査局長(Chief of the General Audit Bureau)、検事総長(Attorney General)と国家保全省長官(Head of State Security)である。

第二に、最高委員会は、法令・規制の制限を受けることなく(Exemption from laws)、以下のタスクを遂行する。

❶腐敗に関与した個人・法人、犯罪・違法行為を特定すること
❷捜査、逮捕状の発布、海外渡航禁止、銀行口座・資産の開示と凍結、資金・資産の追跡、海外送金の防止。委員会は、捜査機関・司法機関に委ねるまでは、あらゆる保全措置を講ずることが可能であり、国の内外を問わず腐敗に関わる資産を国庫に戻し国有財産として登録することが出来る。

第三に、委員会は捜査・訴追等のチームを編成でき、権限を委任することが出来る。

第四に、委員会は義務を完了した暁には、詳細な報告書を提出しなければならない。

第五に、この命令は関係省庁に周知徹底されなければならず、全ての関係者は完全に協力しなければならない。

サウジ国営ニュースサイト「アル・アラビヤ」に基づいて作成
http://english.alarabiya.net/en/News/gulf/2017/11/04/Saudi-Crown-Prince-to-head-a-new-committee-to-combat-corruption.html

この国王勅令によると、ムハンマド皇太子が率いる最高委員会はあらゆる法令の制約を受けないで、捜査・逮捕から資産没収に至るまで超越的な権限を行使できる機関とされています。この点から、一部には今回の粛清劇を、超法規的に権力を再強化する非常手段が取られたという意味で、「逆クーデター」と呼ぶ向きもあります。軍部等が超法規的に権力を簒奪するクーデターとは逆にベクトルが働く非常事態という訳です。

しかし、サウジは絶対君主制の国家であり、超越的な権限を行使するとはいっても、国王大権に由来した権限を行使しているに過ぎません。その意味では政治的粛清(Political Purge)の一環に過ぎないという方が正確でしょう。

その意味で興味深いのが、今回の摘発主体となっている組織が「supreme committee」という名称になっていること。

日本メディアの多くは、これを「汚職対策委員会」や「反腐敗委員会」と訳出していますが、実際には「至高性」を正面から掲げている名称であることは見落とせないポイントだと思います。この組織の権限規定自体は、例えばインドネシアのKPKなどの腐敗摘発機関のものと大した違いはないのですが、絶対君主国家における国王大権に由来して超法規的措置を取るという性格を如実に表しているのが、この「最高委員会」という名称だと思われます。

Tweet about this on TwitterShare on FacebookShare on Google+Share on LinkedInEmail this to someonePrint this page

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です