2017/1/30、トランプ大統領が司法省(DOJ)のサリー・イエーツ(Sally Q. Yates)司法長官代行を解任したと報じられました。
https://www.nytimes.com/2017/01/30/us/politics/trump-immigration-ban-memo.html
トランプ大統領による「イスラム圏7カ国出身者らの一時入国禁止」を命じた大統領令を支持しないように、イエーツ長官代行が司法省内で通知したことに対する厳しい処分です。
イエーツ氏はもともとオバマ政権でDOJの副長官に任命され、リンチ前司法長官を支えていた人物で、FCPA摘発にあたって企業の執行役員・幹部等の個人責任にフォーカスをあてる新しい捜査指針「イエーツ・メモ」を発表したことで知られていました。トランプ政権の発足に伴ってリンチ長官が退任した後、セッションズ上院議員が新しい司法長官として議会承認を得るまでの間、司法長官代行(acting Attorney General)の地位にあった訳です。
トランプ政権発足後に繰り出され物議をかもしている大統領令に対して、「遂に現役の政府高官が公然と反旗を翻し、それに対して直ちに報復措置が講ぜられたこと」に衝撃が走っていますが、ある意味では当たり前の推移です。
2016年の大統領選挙で、当初優位に立っていたクリントン候補が敗北したのは、私設メールサーバー(clintonemail.com)を使った私用メール問題に対するFBIの捜査が二転三転し、社会の批判を浴びたことが主因の一つです。FBIによる捜査にストップをかけたと報じられているのがDOJのリンチ長官(当時)。コミー長官率いるFBIは泣く泣く捜査を終結させましたが、別の捜査(アンソニー・ウィーナー事件)でクリントン側近のフーマ・アベディン氏のPCから新証拠が見つかったとして、捜査を再開させました。この捜査再開の衝撃が、一時は10ポイント近く支持率で負けていたトランプ候補を復活させたのでした。FBIによる再捜査はわずか8日で終結(再終結)させられましたが、一連の経緯が(少なくとも、結果として)トランプ候補を後押しすることになったのは否定できないところでしょう。ちなみにFBIのコミー長官は、政権交替後、早々と「留任」が決まったと報じられています。
イエーツ長官代行がDOJを去るというのは既定路線の話であり、もともとセッションズ新長官が承認されるまでの僅かの期間、長官代行の職に就いていたに過ぎません。驚きだったのは、大統領令とそれに対する各地での抗議活動の盛り上がりの機を逃さず、サリー・イエーツ氏が「大統領に逆らって解任される」という「劇」を見事に演じ切ったことだと言ったら、言い過ぎでしょうか。