トランスペアレンシー・インターナショナルがCPI2016を発表

2017/1/25、トランスペアレンシー・インターナショナルが最新版の「汚職認識指数2016」(CPI2016)を公表しました。 http://www.transparency.org/news/feature/corruption_perceptions_index_2016

トランスペアレンシー・インターナショナル(Transparency International: TI)とは、世界銀行の局長だったピーター・アイゲン氏が創立した、腐敗防止に取り組む世界で最も権威のある国際NGOです(本部ベルリン)。

そのトランスペアレンシー・インターナショナルが毎年発表しているのがCorruption Perceptions Index、通称CPI。これは、各種の調査報告・統計資料等に基づいて、世界各国の「公的部門」(public sector)の腐敗度合いを点数化したランキングで、大手企業等によるリスクマネジメントの基礎資料として採用される事が多いデータです。

2016年版CPI(対象国:176カ国)で1位になったのは、デンマークとニュージーランド。最下位はソマリアでした(10年連続)。アジア太平洋地域に絞ってみますと、ランキングは次の通りです。

CPI算定の基礎データとなるのは世界銀行等による過去2年間の調査結果なので、個別的事案とCPI算定との間にはライムラグがあります。したがって、順位(点数)の変動と個別案件の因果関係を推定することは難しいのですが、概ね次のようなことがいえるかもしれません。

まず、日本が18位から20位に後退したのは、国交省や厚労省といった中央省庁レベルでの贈収賄事件摘発があった他、中央・地方レベルでの政治家に関わる利益供与案件が摘発されたことが影響しているものと思われます(ただし、日本全体の中長期的トレンドを見ると贈収賄の立件数は減少傾向にあることは事実です。例えば過去20年でいうと「贈賄罪の送検人員」は平成10年(1998年)の273人をピークに、平成27年(2015年)は42人まで激減しています)。いずれにせよ短期的には、日本の「腐敗度」は上がったと評価されている訳です。

他方で、例えばミャンマーは昨年の147位(22点)から136位(28点)に上昇していますが、これはアウン・サン・スー・チー(Aung San Suu Kyi)外相兼大統領府相兼国家顧問が積極的に腐敗防止に取り組んでいることが評価されたのでしょう。

このように、デンマークをはじめとするトップ10とソマリアや北朝鮮が常連のワースト10の顔ぶれはあまり大きくは変動しないのですが、その間の「中間層」は細かく順位が変わっていることが分かります。

ところで上位層の特徴の一つが「公益通報保護」制度の充実です。トランスペアレンシー・インターナショナル日本支部(TI-J)の若林亜紀理事長が指摘しているように、「1位のニュージーランド、10位のイギリス、13位のオーストラリアなど英連邦の国々は公益通報保護などの腐敗防止法が整っており順位が高い」のです。日本でも、公益通報者保護制度の民間事業者ガイドライン(消費者庁)が改訂され、法改正の検討が進んでいますが、公益通報保護を「腐敗防止のグローバルな潮流」の中に位置付けて議論を深めることが必要でしょう。

http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/198188

また、武力紛争との関連を視野に入れることも重要だと思われます。若林理事長によると「北朝鮮、アンゴラ、スーダン、南スーダン、ソマリア、アフガニスタンなど腐敗認識指数の低い国ほど武力紛争が絶えないという相関」があるとのこと。この指摘は、極めて重要です。なぜなら地政学的リスク、カントリーリスクの分析は腐敗防止対策に欠かせないからです。

http://www.ti-j.org/CPI2016pressrelease.pdf

いずれにせよ、綱紀粛正の嵐が吹き荒れた中国(40点で79位)よりも現時点でランキングが低い国家(インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジア等)でのビジネスについては、腐敗関係のリスクに特段の注意を払うことが必要不可欠だと考えられます。

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