2019/6/29、「G20大阪サミット」(20カ国・地域首脳会議)が閉幕しました。今回のG20サミットでは、懸念されていた米中対立激化がひとまず回避された形になったかと安堵したその直後、トランプ大統領が板門店を電撃訪問し金正恩朝鮮労働党委員長と三回目の首脳会談を行うという衝撃的な展開になりました。
ともあれ、今回のG20で採択された首脳宣言には、「自由で公正かつ無差別な貿易・投資環境を実現し、開かれた市場を保つために努力する」といった文言が取り入れられた他、一連の会議の中で、プラスチックごみ流出による海洋汚染を2050年までにゼロにする「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」や、データ流通の国際ルール形成を謳う「大阪トラック」といった新しいスキームが次々と公表され、「大阪 OSAKA」の名前が世界に一層強い印象を残すものになったように思います。
それに加えて、腐敗防止の観点から注目すべき点は、首脳宣言に次のような「腐敗対策」が記載されたことです。
G20 大阪首脳宣言
2019年6月28日・29日腐敗対策
20. 我々は,関連する国際文書及びメカニズム間の相乗作用を強化しつつ, 「G20腐敗対策行動計画 2019-2021」の履行を通じて,腐敗を防止し,これと闘い,清廉性を促進するグローバルな努力において先導的な役割を担うことに引き続きコミットする。我々は,腐敗との闘いはインフラの質と信頼性を確保する上で極めて重要である旨認識しつつ,「インフラ開発における清廉性と透明性に関するグッドプラクティス集」を我々の更なる取組の一部として歓迎する。我々は,「効果的な公益通報者保護のためのハイレベル原則」を承認する。我々は,腐敗との闘いにおける G20構成国間のハイレベルの国際協力を追求し,腐敗の防止に関する国際連合条約のレビュープロセスを含め,同条約の効果的実施を通じて,模範を示すことにより主導するとのコミットメントを再確認する。我々は,外国公務員贈賄と闘い,G20各国ができる限り早く外国公務員贈賄を犯罪化する国内法を整備することを確保するための取組を強化する。我々は,OECD外 国公務員贈賄防止条約の遵守に向けた努力に留意する。我々は,腐敗と闘うため の実際的な協力を継続し,G20及び国際的なコミットメント並びに国内法制度と整合的な形で,腐敗関係の捜査対象者及び彼らの腐敗の収益の安全な逃避先を否定するという我々のコミットメントを再確認し,財産回復協力に一層緊密に協力する。我々は,腐敗に関連する深刻な経済犯罪者及び奪われた財産の回復に対処するための国際協力の現状に関する報告書が関連国際機関によって準備されることを期待する。加えて,我々はまた,関連国際機関による腐敗とジェンダーの連関に関する取組を歓迎する。
https://www.g20.org/pdf/documents/jp/FINAL_G20_Osaka_Leaders_Declaration.pdf
G20 Osaka Leaders’ Declaration
ANTI-CORRUPTION
20. We remain committed to play a leading role in the global efforts to prevent and fight against corruption, as well as promoting integrity, by implementing the G20 Anti-Corruption Action Plan 2019-2021 while strengthening synergies among related international instruments and mechanisms. Recognizing that countering corruption is an important requisite for ensuring quality and reliability of infrastructure, we welcome the Compendium of Good Practices for Promoting Integrity and Transparency in Infrastructure Development as part of our further work. We endorse the High Level Principles for Effective Protection of Whistleblowers. We renew our commitment to pursuing high level international cooperation between G20 members in the fight against corruption and to lead by example through the effective implementation of the United Nations Convention against Corruption, including its review process. We will intensify our efforts to combat foreign bribery and to ensure that each G20 country has a national law in force for criminalizing foreign bribery as soon as possible. We take note of the efforts towards adherence to the OECD Convention on Combating Bribery of Foreign Public Officials in International Business Transactions. We will continue practical cooperation to fight corruption and reaffirm our commitment to deny safe haven to persons sought for corruption and their proceeds of corruption consistent with our G20 and international commitments and our domestic legal systems and will work more closely on asset recovery cooperation. We look forward to the scoping paper on international cooperation dealing with serious economic offenders and recovery of stolen assets in relation to corruption to be prepared by relevant international organizations. In addition, we also welcome the work on the linkages between corruption and gender being undertaken by relevant international organizations.
https://www.g20.org/pdf/documents/en/FINAL_G20_Osaka_Leaders_Declaration.pdf
G20が腐敗を防ぐグローバルな努力において先導的な役割を担うことを確認するとともに、腐敗による「財産の損失の回復」が重視されています。また、「インフラの清廉性・透明性に係るグッドプラクティス集」を歓迎するとともに、「効果的な公益通報者保護に関するハイレベル原則」を支持することが表明されたわけです。
今回の大阪サミットを契機に、いっそうの腐敗対策が実効性を持って遂行されていくこと、そして何よりも日本こそがその先頭に立つことが期待されます。